第12話 仕事⑤

意外にも子供達は承諾をしてくれた。

問題は山を登れるかということだったのだが、杞憂だった。

初めて会ったときの印象は、やせ細った外見から、弱々しさを抱いていたが、フィロの心境変化もあってか、子供達も活発になってきた。

あまり、休憩もせずに到着。

宿屋のテラスに座っていたジモンさんが歓迎してくれる。


「待っていたぞ」


子供達は持ってきた荷物を宿屋に置きに行き、僕達は専用の作業服に着替え、探鉱現場に向かった。

昨日の帰り間際に簡単な挨拶をしているので、今日はしない。

すぐに作業となる。

探鉱の基本的作業はそう難しくない。

鉱脈を掘って、採掘した鉱石を運んで、削り、粗を取って、取引先へ持ち込む。

掘った場所に鉱石がないことはよくあることで、掘り手はセンスも必要とされるベテランがする仕事。

僕達若手の仕事は運搬になる。


「鉱石はだいたい大きめに掘っているから落としても大丈夫だ。しかし、だ。作業を一つ止めることで、遅れが発生する、それは良く無い」


慎重に、迅速に、迷惑をかけずにすることを心掛けるようにと言われたのである。

初心者には難しい。

とりわけフィロは女性だ。

運搬はかなり難しい。

早々に運搬のメインは僕の仕事となり、フィロは荷台から荷台へと移す仕事を任せられていた。


「ふぅ、ふぅ…重いぃ…」


この仕事を1ヶ月もしないといけないとは。

短期間で申請をしたはずなのに、ここの標準労働期間は1ヶ月と言われたときには、驚きを隠せなかった。


「ふぅぅー」


大きく息を吐く。


「フィロ〜、代わって〜」

「むり、私はそれ、とくいじゃない」

「はぁ〜」


何往復しただろうか。

これが毎日続くと思うと気が滅入る。

昼時の休憩の合図、仕事終わりの鐘の音は、楽園にも勝ると思った。


初日は、宿に戻るとすぐに寝室に行った。

夕飯を皆で囲む力も無くだ。

子供達、ネム・ジュリ・イアン・ユウも寂しそうにしていた。

休憩時に出された水が、その日唯一の食事になった。



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