第9話 仕事②
指定された日に赴くと、初日とは違い、建物内には受付嬢の他に数人、僕達のような申込者がいた。
順番が来るまで席で待つ。
フィロはソワソワしていて忙しない。
僕はというと、あの日、紹介所を出てからのことを思い出していた。
フィロ達の家に戻ったまではいい。
次の日だ。
朝からフィロはいない。
聞いてみると、いつも朝に出かけているということだ。
戻ってくる時間は曖昧だが、帰ってきた時は食べ物などを分配してくれる、ということらしい。
確実に盗みだろう。
それを辞めさせるために、ここに来たというのに、次の日には、いつもの行動に出てしまっているということだ。
常習犯。
街の人達が、気づいてるかどうかは分からない。
気づかれていないにせよ、好感度を上げる、獣人への風当たりを和らげる必要性がある。
仕事以外にも、日々の行動の見直しが必要かもしれない。
これから、ここで、フィロ達が、安全に生きていくために。
勿論、盗みをした日は、叱りつけをしている。
あまり人に怒らない方ではあるが、今後の彼女のためだ。
ある程度の指導は必要。
フィロはというと、つい癖が抜けなかったなどと言っていたが、それはダメだ。
癖を理由にしてはならない。
一緒に決めたことなのだから。
暫くは、仕事だけでなく、彼女の日常生活もしっかりと監視しないといけないかもしれない。
再認識し、頷いていると、順番が来たようで、受付嬢から声をかけられる。
ウロウロしていたフィロも戻ってきたところで、僕達は指定された席へと着く。
「お待たせ致しました」
深々と頭を下げてくれた。
「先方様からの承諾をいただきました。つきましては、これからお伝えする現場に直接赴いていただけますでしょうか。先方様がお待ちしております。時間は厳守ということではないとのことです」
お互いに顔を見合わせ、喜びを顔に滲ませ、受付嬢にお礼を伝えた。
外に出ても、フィロは大いに喜び跳ねていた。
「時間厳守ではないけど、もう会いにいこうか。最初が肝心だから、こういうのはね」
「うんうん!いこういこう!」
喜んでいるようで、僕も嬉しい気持ちになる。
手に持つ雇用承諾書を眺めていると、現場は探鉱と記載されていた。
「探鉱??」
「??」
僕達はまた見合わせた。
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