第7話 出会い⑤

自分の主張のみ、押し通すことは難しい。

会話の主導権を握るのもそうだ。

順序立ては、とても重要だ。


「ずっと、こんな生活をしているの?」

「...そう...。ここでは、この街はじゅうじんは、あまりかんげいされない」


彼女の言うとおり、そういう街があることは知っている。

南にある都市は、かなり酷かったのを覚えている。

ここでは、そのような雰囲気は感じられないけれど、単純に数が少ないから希有に見られているだけ、ということかもしれない。


「まえの街は良かったの。でも、バレておいだされて、ここまでにげてきたけど、ここもかんげいされない。この街もでようとおもた、でもこの子たちにあったから、だめなの。私がついていないといけないの」


やはり獣人だけなら、あの砂嵐を一人で越えることはできるようだ。


「君…、名前は?」

「フィロ…、フィロ・ネリウス」

「フィロか、いい名前だ。僕はリン、よろしく」


そっと手を差し伸ばす。

まだ警戒心はあるものの、フィロも僕の手を握ってくれた。


「僕もね、仕事を探さないといけないんだ」


財布の中身をちらりと見せる。

我ながらなんとも恥ずかしい限りではある。

でも今は同じ境遇、一体感を感じてくれたほうが効果的だ。


「一緒に探そう。僕もついていくから安心してくれていい。なぁに、これだけ広い街なんだ、仕事ならすぐ見つかるさ!僕に任せなさい!」


怪しさを払拭するように、僕は自信満々に応えた。

少しは警戒心が溶けたような気がした。


ふと空を見上げると、日が傾き始めている。

紹介所には早めに行ったほうが良さそうだ。

彼女の腕を掴み、早めに行くことを伝えた。


「今から!?」

「うん!まだ日が沈むには時間があるからね」


渋々了承してくれたようで、立ち上がってはくれた。


獣人よりも足の遅い人間が、前を走る。

手を引きながらだと、異様さは増すだろう。

後ろの方で、おねえちゃんいってらっしゃい、と確かに聴こえた。



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