第3話 出会い①
人集りに近づくにつれ、声量も大きくなっていく。
観客は老若男女いるようで、中央付近は見えにくい。
ようやく見えた隙間から、男達が腕相撲勝負をしているのが分かる。
男2人の真ん中に審判もいる。
人と人の間の隙間に顔を入れているため、全体を見渡せはしないが、勝ち負けの賭事もしているようで、悔しさを露呈する声も聞こえる。
目の前の試合が終わったとき、勝負していた男の一人と眼が合ったのは気の所為だろうか。
試合はまだ続きそうだった。
お金さえあれば賭事で一儲けすることもできたのだが、生憎余裕はない。
人混みから必死に抜け出そうとあたふたしていると、目線の先の影が動いた。
この街では初めて見るもの。
獣人だ。
前の機械都市でも、獣人はいたが、数は少ない。
そもそもの生態系として絶対数が少ない。
8割ほどが一般的な人間という人種で、次いで獣人や妖人、ロボットなんかが生活している。
手足や身体の一部を機械で補っている人もいるけれど、それは普通の人間とカウントしていいだろう。
800年前までは人間種のみだった世界が、今は幾つかの種に分かれている。
生態系が破壊されたのは、とある事象が起因しているとよく言われているのだが、一旦置いておく。
今は目の前のことに集中する必要がある。
獣人が何やらコソコソとしているからだ。
目を向けると、2つ隣の男性に近づいたあと、次は隣の女性、そして老人と、後ろに回っては、すぐまた別の人の背後にいた。
凝らしてみてみると、一瞬ではあるが、無防備な鞄やポケットに手を忍ばせているのがわかる。
…スリだ。
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