第2話 街②
匂いに連れられた先には、美味しそうな店がたくさんある。
肉、魚、野菜、卵、果物などと選び放題。
店周りに卓といった、座って食べるスペースはないので、食べ歩きになる。
物欲しそうに見ていると店員に話しかけられるのだが、料金を見てはすぐ断りを入れる。
その繰り返し。
圧倒的にお金が足りないのだ。
定職に就いているわけではないため、定給という概念はない。
街の紹介所に行って、短期間で働ける場所を聞き、賃金を貰い、生活費を稼いでいる。
余った分は旅の資金源になる。
これは非常に、本当に効率が非常に悪い。
どこかの誰かに、もう少し考えて行動しろと言われたこともあったかもしれない。
この生活習慣を変えないかぎり、一生裕福な生活は送れないだろう。
当分、変える気はないのだけども。
「働き口もそうだけど、まずは腹ごしらえかな…」
「よぉ、旅のお兄さん。これなんてどうだ?」
財布を開けたり閉めたり、覗いては目を閉じたりしていると、中年の男から声をかけられる。
店頭には、朝採れたであろう野菜や果物が並んでいた。
どれも美味しそうだ。
香りもいい。
しかし高い。
肉魚に比べれば確かに安価だが、いまの僕には手が出ない。
買ったら数日後、所持金は底をつく、そんな気がする。
「この赤いのは何ですか?」
ふと、あまり艶の良くない果物を見つけた。
店主に聞くと、売り物ではない様子。
他の果物同様に店主が作っているものだが、集荷する前に枝から落ちたらしく、間食用にしているんだとか。
「売ってくれませんか?」
「それはいいが、あんまり美味しくねぇぞ」
お金を抑えられるのであれば問題無い。
笑顔で会釈をして、数個買うことにした。
数日はまだ生きられるだろう、これはかなり嬉しいことだ。
それを一齧りしたところで、向こうの方で、何やら賑やかな歓声が聴こえた。
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