第6話 新たな迷宮ルソワール その1
『人族を滅ぼせ…』
『ロキの復活を…』
『中央祭壇を破壊せよ…』
「ん‥?なんだよ…うるさいなぁ」
ノイズのような声が頭に響き、意識を引き戻されるノア。
謎の声は同じ事を繰り返しノアの頭へと直接届けてくる。
〚おはようございます。マスター。ワタシはダンジョンコアに宿る、マスターの案内役兼補佐である
「俺は魔王になるなんて言っていないし、人族を殺すとも言ってないぞ。お前が勝手に登録したんだろうが。さっさとあのよくわからん登録解除しろ。ほら早く!悪徳商法にも程があるぞ!」
『人族を殺せ…』
『国を滅ぼせ…』
『世界を我が手に…』
(…さっきから喧しいな!この声。)
〚それは出来かねます。全ダンジョンでマスターの登録の解除はマスターが死亡する事が唯一の条件となっています。また、ダンジョンに一定数の人族を呼び込めない場合は一定期間でダンジョンコアとの接続が断たれ、マスターは強制的に死亡となります。〛
「…はあ?ならなんだ?俺はいきなり誘拐された挙句、ここで人族を殺すやつらの総大将をしろってのか?冗談キツイぜ。」
〚冗談ではございません。マスターにはダンジョンに侵入する人間の排除と外界への侵攻、ダンジョンコアの防衛に当たっていただきます。〛
『女神を滅ぼせ…』
『世界を我が手に…』
『裏切り者には制裁を…』
「チッ」
苛立たしげに舌打ちをするノア。
先程からおかしな声が響くたび、頭の中に霧がかかるような、眠る直前のような感覚に陥るのだ。
(成程な…多分これで洗脳して、人絶対ぶっ○魔王に仕立てる訳か。そんなに効果は強くないし、できれば発生源から壊したいが…今の所イーブル?が宿ってるコアってやつが怪しいな。多分俺が触れたあの玉の事だろうけど。)
コアを探してノアはようやく周りを見渡す。
そこは何もない洞穴のような状態の広間で、唯一あるのは放置された空の玉座。
その玉座の背もたれの上には龍のような手と、それに掴まれるあの玉があった。
(コアみーっけ)
よくよく意識してみると、イーブルの声もよくわからん洗脳の声も椅子の方向から飛んで来ているような気がする。
だからとりあえず、コアを鷲掴みにして、引っこ抜いてみた。
〚そちらがダンジョンコアになります。このダンジョンから持ち出すことは出来ず、マスターの魂をリンクさせているため、それを破壊されるとマスターは死に至ります。〛
『我らが神の野望を果たせ…』
『人を殺せ…』
『中央祭壇を破壊するのだ…』
(お、声が大きくなったか?どうやらコレで当たりっぽいな。どれどれ…)
声の出処がわかったところで、とりあえずコアを解析してみるノア。すると、謎の声が響く瞬間だけ、僅かに魔力が揺れ動く箇所があった。
(ここが洗脳装置の機構部分か?そうなると…)
「そうか。ところで肝心なダンジョンの運営ってどうやるんだ?」
〚ダンジョンの運営は、ダンジョンコアから供給される魔力により、階層ごとに構造やモンスターを変化させて行います。
ダンジョンの創造方法は二通りで、ワタシに聞くか、そちらのコアを持って《ダンジョンメニュー》とお唱え下さい。
ダンジョンの各機能の説明を見られる他、ダンジョンの編集を可能にする魔法で、魔王と魔王に許可を得た者のみが使える特殊技能になります。〛
(なるほど。魔王となったものに与えられる固有詠唱魔法か。おっ!洗脳のすぐ横の魔力回路がイーブルの機構か?)
固有詠唱魔法というのは特定の者が持つ魔法で、その人物のみが使える特殊な魔法のことだ。
特定の魔力と言葉を発動の鍵とした魔法で、その言葉と、本人の魔力が合わさって初めて発動する魔法である。
有名所だと勇者の宣誓魔法や巫女系統の神降ろし、聖女系統の神託になるだろうか。
(つまり、このイーブルがいなくても特に問題はない…どんな悪影響があるかわからないし、どちらの機構も停止しておきたいところだが…。)
流石に壊せば自分が死ぬと言われているものに手を出すのは躊躇われる。
が、躊躇って洗脳されて、略奪者にまわることだけはどうしても嫌だった。
(
そう言うやいなや、魔力をコアの2つの機構に向けて叩きつけるノア。
表面は謎の力に覆われて保護されているが、お生憎様、魔力がこの力に干渉できないのは誘拐された時と解析時に確認済みだ。
〚ーーーーーーー!!!!深刻なエラーを検知。至急、原因特定と排除に以降。原因特テイカイシシシシーーーーーー…〛
『人族をー』
直後に鳴り響く警報と共に沈黙するイーブルと、プツリと途切れる謎の声。
そして、ようやくノアの頭に静寂が訪れた。
「ふう…。ようやく静かになったな。さて、これからどうするか…コアが持ち出せない以上、置きっぱなしにすると先の人間たちのみたいにここを訪れた奴らに破壊されかねないな。
そうなると、俺の今後の行動としてはまずここの防御を固めるのが第一で、その後に可能であれば人族と手を組みたいな。
元の世界に帰るにしろ、
…なにはともかく、まずはダンジョンの勉強会か。『ダンジョンメニュー』」
そう言って、ノアは静かになった洞穴でダンジョンメニューを開き、ダンジョンの取り扱いについての勉強を始めるのだった。
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異世界魔王、迷宮まおう() さざなみ @kenke
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