第4話
僕は、健成と非常階段に来ていた。
ここなら誰も来ないはず。
「これはどういうことが教えて貰おうか?」
そう言って僕は、先程の健成からのLINEを健成に見せた。
「あ〜これはですね。たまたま後ろを見たらなんかすっげぇいい感じだなぁって思ってつい写真を撮っちゃいました」
「この事を忘れてくれ」
「どうしようかな?ちなみに相馬は、夏秋さんのことを好きなのか?」
「好きではない」
「好きになる可能性はないのか?」
「どうだろう?」
「分かった。とりあえず今日のことは忘れるとしよう」
「良かった。ありがとう」
「大丈夫だ。それにせっかく相馬と友達になったのに喧嘩したくないからな」
「健成…」
そう言って僕は健成と肩を組んだ。
ように見せかけて僕は、健成の首をガッチリとホールドした。
「えぇぇ!?なんで?俺さっきのこと忘れたよ?」
「そこじゃない!喧嘩したくないならさっきの写真撮るなよォ〜!!」
「痛い痛いギブギブ」
そう言って健成は、僕の腕をバシバシ叩いた。本当にギブかもしれないからガッチリとホールドしていた腕を緩めた。
「ハァハァ危ねぇ」
「懲りたらもうあんなことするなよ?」
「はい。ごめんなさい」
こうやって悪いことをしたらすぐに謝れるところは、健成のいい所かもしれない。
「今日は許す」
「はは〜。ありがとうございます〜」
「ぶふっ」
わざとらしく感謝しているフリをしている健成を見ていたらなんだか面白くなってきた。
「学食のおすすめのメニュー楽しみにしてるから」
「分かってるよ〜」
そう言って僕達は教室に戻った。
席に着くと夏秋さんが僕の方を向いて話しかけてきた。
「畠中くんと何をしてたのですか?」
「ちょっと話してた」
「そうですか。転校してきて早速青春していますね。恋愛だけじゃなくて友情も青春ですからね」
「たしかに。友情も青春か…」
普通の言葉というか、当たり前のことなのになぜか、心に響いてしまった。
「相馬くんが、この高校を満喫しているようでよかったです」
今更だけど、夏秋さんが僕以外のクラスメイトと話しているところを見たことがないな。気のせいかな?
それに、夏秋さんめっちゃ僕に親切だな。もしかして、モテ期?いやいや、僕には心に決めた人がいるんだ!
夏秋さんはとても容姿も整っていて、性格もいいから優しくされると少々ドキッとしてしまうけれど、僕には小学生の頃から好きな人がいる。
* 小学5年生のとき…
「うぇぇぇぇん、やめてよぉ…」
「やだね!早くそれをよこせよ」
少し身長の高い男の子2人(おそらく年上)が身長の低い女の子から何かを奪おうとしていた。靴が僕の通っている小学校の指定のものと違うからおそらく違う小学校の子だ。
「これはお父さんに貰った大事なものなの」
「そんなん知るか!」
僕は巻き込まれたくないと思い、見て見ぬふりをしようとした。
「誰か助けてよぉ…」
その言葉を聞いた瞬間、僕の体は勝手に動き出していた。
「嫌がることはしたらダメ!」
そう言って僕は2人の男の子から女の子を守るようにして、僕は2人の間に立っていた。
「何言ってんだよ!欲しいものは取ったらいいんだよ」
そう言って男の子達は僕を2人がかりで殴ってきた。
うッ…痛いっ、
「逃げて…」
僕は気がつけば女の子に逃げるように言った。
女の子は、何も言わずに逃げ去っていった。
これでいい。これでい、ーーーー
「はッ!」
「あ、目を覚ましたようですね」
どうやら僕は気を失っていたようだ。おそらく女の子は男の子達がどっかに行ったタイミングを見計らって僕のところに来てくれたのだろう。
「あの、助けてくれてありがとうございました」
女の子は、そう言って深く頭を下げた。
「実は、さっきあの人たちが取ろうとしていたものは、離ればなれになったお父さんからの最後のプレゼントだったのです」
「そうだったのか。助けて良かったよ」
それが僕と彼女の出会いだった。
違う小学校に通っていたから、毎日会うことはできなかったが週末になったら、僕達はいつも遊んでいた。
近くの川で魚取りをしたり、神社の裏で木の実を集めておままごとをしたり…
僕達の住んでいたところは少し田舎だったので、周りに自分達で考えて遊べるところがたくさんあった。
僕は、彼女と会うたびに少しずつ彼女のことを好きになっていった。
僕が彼女と出会って1年と、半年がたったころ。
僕は、今日彼女に告白をする!
けれど、ずっと一緒にいたから、恋愛対象として見られていなかったらどうしよう。
「あ!なっちゃん!」
彼女が約束の場所に居た。
ずっとなっちゃんと呼んでいるから本当の名前を忘れてしまった。ということは秘密にしておこう。
「そうくん…」
?
なっちゃんは、いつもは太陽の様な笑みで迎えてくれるのに、今日は少し様子が違う。
こんなに元気がない時に告白をするのは良くないのかな?
けれど、あと少しで僕達は中学生になるから会える時間が減ってしまう。今のうちに告白をしておかないと…。
「なっちゃん!」
「そうくん…」
僕達はほぼ同時に名前を呼んだ。
「先にいいよ」
僕が、この言葉を言ったのが間違いだった。
「…あの、そうくん…。お母さんの仕事の都合で遠くに引っ越すことになったの…」
「え…」
頭が真っ白になった。
え?引っ越すってどういうこと?え、え…
もう、会えない…?
なっちゃんが何か言ってるけど頭に入ってこない。ごめん、なっちゃん。
「そうくん。ごめんね」
「し、しょうがないよね。だって仕事の都合でしょ?」
「だけど…」
「謝らないで。せめて笑顔でばいばいしよ?」
「そうくん…」
大粒の涙が僕の足元に落ちた。そっか、僕泣いてるんだ。悲しいな。これからどうやって生きていけばいいんだろう。
あ…。なっちゃんも泣いている。なっちゃんも悲しいんだ。僕は、なっちゃんにとっての大切な人になれてたんだな。
それだけで僕は、少し救われた気がした。
僕は、涙と鼻水を拭ってなっちゃんに言った。
「いつか、絶対にまた会おう!」
「うん。絶対に!」
そう言って僕達は涙を流しながらも笑顔で別れた。
* 現在…
あれ、あの子なんて名前だったっけ…。あの子も、僕のことをもう忘れているのかな…?また会いたいな…。
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