第3話
「なんでここに…?」
「相馬くんからしたらここは最寄りのスーパーでしょ?私は相馬くんと同じマンションに住んでいます。私の言いたいことは分かりますか?」
「夏秋さんからしても最寄りのスーパー…」
「正解です!」
「夏秋さんは何を買いに来たんだ?」
「ん〜、決めてませんでしたけれど相馬くんの買い物かごに入っているキャベツが美味しそうなのでロールキャベツの材料ですかね?」
「今決めたのかよ!」
とは言いつつも、僕もついさっき決めたのだけれども…
「はい。私は目に入った美味しそうな食材で料理を決めていますので」
「なるほど。真似させてもらう」
「いいですよ」
そう言って夏秋さんは、微笑んだ。
なんて眩しいのだろう。
「そういえば相馬くんは、夕飯はどうするのですか?」
「実は、僕もこのキャベツが凄く美味しそうに見えてロールキャベツにしようと思っていたんだよ」
「そうでしたか。私たち意外と相性いいかもしれないですね?」
少しドキッとしてしまった。夏秋さんに、バレていないだろうか?
「どうだろうね」
恥ずかしかったので曖昧に答えた。
「それでは、私は夕飯を作らないといけないので、今度こそまた明日です」
そう言って夏秋さんは手を振ってくれた。
「うん。また明日」
手を振り返すのは少し僕には照れくさくハードルが高かったので出来なかった。
夕飯は、ロールキャベツと決まったので必要な材料をスマホで調べることにした。
検索をかけると様々なレシピがすぐに出てきた。
本当にスマホって凄いよな〜。って僕は年寄りかよ!
自分で自分にツッコミをいれた。
1番簡単そうなレシピに書かれている材料を買って、スーパーを後にした。
家に着いた頃には少し夕飯を作るのを急がないといけないぐらいの時間になっていた。
「ふぅ。このレシピ分かりやすくて良かったな」
また使うだろうと思いレシピをスクショした。
ぐ〜〜〜〜〜〜。
とても大きな音がお腹から聞こえたきた。
早く食べよっと!
「いただきます」
僕は、早速ロールキャベツを1口食べた。
ん〜!!
「熱っ!水っ、水ぅ〜」
流石に出来たてのロールキャベツは熱かった。僕は勢いよく水を飲み干した。
熱いので少し注意しつつ、冷ましながら食べることにした。
ふぅ〜!ふぅ〜!
「もう大丈夫かな?思い切って食ってやる〜!」
そう言って2口目を食べた。
ん?んん〜!!
「おいっしぃ〜!」
スープの、味付けがお肉とキャベツといい感じに絡んでいてとてもおいしくできていた。このレシピ絶対これからも使おう。
気がつけば夕飯は全て僕の胃袋の中に入っていた。あぁ。幸せな時間ってどうしてこんなに早く感じるんだろう。
明日は何作ろっかな♪
自分で料理を作ることを少しだけ好きになってしまった。達成感もあるし、美味しいものを食べられて幸せ。意外と自分で作るのも悪くないな。
バシャーー
「熱っ!」
皿洗いがなければ…
僕は、寝る前に少し考え事をしていた。
今日は、いい日だったなぁ〜。健成と友達になれた。クラスのヒロイン的存在の夏秋さんに優しくしてもらった。ロールキャベツ美味しかった。
じゅるりとよだれが垂れそうだったけれどぐっと堪えた。
ロールキャベツは、健成と、夏秋さんと同じぐらい最高な出会いだった。
最高だぁ。生きててよかったぁ。
明日も、学食行こうかな?それとも弁当作ってみようかな?
決めた!明日は学食だ!健成にもっと学食のおすすめメニューを教えてもらいたい。
眠い目をこすりながら、僕は健成にLINEを送った。
『明日良かったらまた学食一緒に行かない?』
健成からの、返事が来るまで割と時間がかからなかった。
『いいぜ!明日はきつねうどんと同じぐらいのおすすめを教えてやるよ!』
『ありがとう』
すると、体でおっきな丸を作っているスタンプが送られてきた。いかにも健成らしいスタンプだ。
僕が、夢の世界に入るまでそう時間はかからなかった。
ピピピピ♪ピピピピ♪
耳元でスマホから電子音が響いている。
「ん〜。?」
アラームを止めるためにスマホの画面を見た。
7:28
「…ヤバい!遅刻する!」
僕はアラームの鳴ったままのスマホをベットに放り投げて慌ててクローゼットを開き、制服を取り出した。
35分までに家を出たらギリギリ間に合うはずだ。
ピピピピ♪ピピピピ♪
アラームの音が僕を、急かす。
寝癖をなぐす時間もない。トイレは…言っておかないと地獄を見る。
出来るだけ早くトイレを済まし、僕はずっと鳴っているアラームをやっと止めることができた。
7:34
走れば間に合うはず。僕は、家から高校まで出来るだけ本気で走った。普段からアニメを見たり、ラノベを読んだりして週末を過ごしている僕にとっては、走ることは少しきつかった。走って休むを繰り返してやっとの思いで高校に着いた。
時計を確認すると、予鈴の3分前だった。
早く教室に行かないと。転校して2日目が遅刻は何がなんでも避けたかった。
ハァハァハァ…間に合った。
キーンコーンカーンコーン♪
僕が、教室に入ったのと同時に登校完了を示すチャイムがなった。
実際、このチャイムがなる前に学校に入れていればよかったけれど、ホームルーム超ギリギリで入ってくるラノベでよく見るアレは、転校2日目の僕には、まだ早すぎる。
時計を見ると、ホームルーム3分前だった。
寝癖を直すためにトイレに行くと100%遅れてしまう。恥ずかしいが今は我慢するとしよう。
「相馬くん。そんなに息を切らしてどうしたんですか?」
「ちょっと寝坊してしまって走って来た」
「そうですか。だから、おっきな寝癖があるのですね」
「ちょっと後ろを向いてください」
後ろ?
「わかった?よ」
くるりと後ろを向いた途端、僕の頭を夏秋さんの小さい手が触れた。
「うわぁっ」
「ふふふ、びっくりしすぎですよ?」
ヤバい、今は誰も気づいていない(多分)けれど、男子に見つかったら終わってしまう。恨まれて殺されちゃう…。
夏秋さんは、僕を異性として見ていないのか?と思わせるほど堂々と、慣れた手つきで僕の寝癖を直していく。
なんか、優しい手だなぁ。
「終わったよ。どうかな?」
そう言って夏秋さんは手鏡で僕の髪を見せてくれた。
いつもよりもイケてる感じになっている。
「ありがとうほんと助かった」
「良かったです」
「ホームルーム始めるぞ〜」
夏秋さんの言葉を遮るように教室に入ってきた担任がホームルームを始めた。
実は、僕は夏秋さんが寝癖を直してくれている間ずっと胸の鼓動が早くなっていた。それを悟られないように出来るだけ違うことを考えて抑えていたが、全く抑えきれなかった。
バレていないよね?
夏秋さんは特に気にした様子もなく、先生の話を聞いていた。
良かったぁ。ブーブーブー
ん?
高校にいる間は音を消して振動だけにしている僕のスマホが何かを受信した。
スマホの画面を開くと、
『クラスのヒロインから寝癖を直してもらえて幸せな河上 相馬氏』
というメッセージと、僕が夏秋さんに寝癖を直してもらっている所をこっそり撮った写真が送られてきた。
『後で話がある』
僕はそう言って健成の背中を睨んだ。
恥ずかしいから今見た事は忘れさせるとしよう。
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