第2話

「〜ん、」

 僕は、転校して初の高校から帰り道で、考え事をしていた。それは、昼の1件についてだ。僕は、今日初めて夏秋さんと出会ったはずなのに、夏秋さんは僕が一人暮らしをしていることを知っていた。

 なぜ分かった?ストーカー?

 いやないない!あんなクラスのヒロインみたいな人が僕みたいな普通の人にストーカーをするはずがない。

 慌てて自分の考えを否定した。

 だとしたら会ったことがある?

 けれど、夏秋さんは綺麗な茶髪のロングで、僕でも1度見たらすぐに忘れないほどの容姿をしている。

 だったらなぜ!?

 ちょうど、転校した時に借りたマンションのエントランスに来ていた。

「あら相馬くん。今帰ってきたのですか?」

 む?むむむ?なぜか、夏秋さんの声がした気が…いや、ないな。そんなことがある訳ない。

 僕の家は少し裕福で、一人暮らしをする際に両親が、息子を一人にさせるなら、エントランスに鍵の着いた安全なところがいいと言い張ったので、少し家賃が高いマンションに住んでいるのである。だけど、夏秋さんの家も少し裕福で僕と同じような感じでここに住んでいる。ということはありえる。自分で考えるより聞いたほうが早い。

「そうだけど。夏秋さんは、ここに住んでいるの?」

「ん?私ですか?そうですね。ここに住んでいますね」

「そうなんだ。僕が一人暮らししてるの分かったのってここに住んでるから?」

「そうですね」

「だからかぁ」

 やっと、謎が解けた。夏秋さんは、元々ここに住んでいた。そして僕がこのマンションに来て、荷物を移動している時におそらく見られたのだろう。

「だって、私のお母さんは、このマンションの大家ですから」

 大矢?違う。大家だ。このマンションの大家さんには、何回か会ったことがある。

 そういえば、どこの高校に通うのか聞かれたことがあったはず。おそらく夏秋さんこの事を話して、一人暮らしの事を知っていたのだろう。

「そういうことか」

「お母さんは、このマンションの大家以外の仕事もしているので、新しい住民が来た時以外はほとんど会えないんですけれど」

「実質一人暮らしってことか?」

「いや。その事なんですが、お母さんは私の願いを大体叶えてくれる人でして、一人暮らししたいと言ったら空いてる部屋を私にくれたのです。だから、私は一人暮らしです」

「なるほど。娘に甘い人なんだね」

「そういうことになりますね」

「今更なんだけれど、ここ僕の部屋の前なんだけど?」

 なぜか夏秋さんは、僕の部屋の前まで着いてきたのだ。

「知ってますよ?」

 知ってるんかい。何となく察したが当たってた。

「私は相馬くんの部屋の横の部屋に元々住んでいるのですよ」

「ふぇ?」

「今「ふぇ」って言いましたか?」

 笑いをこらえてるのだろうか?肩を揺らしながら夏秋さんが聞いてきた。

「忘れてくれ」

「できる限り忘れます」

 そう言いつつもずっと笑いをこらえている。

「とりあえず、さようなら」

「はい。さようなら。また明日学校で会いましょうね」

「うん」

 そう言って夏秋さんとは別れ、自分の借りた部屋に入った。

「はぁ。聞いてないって」

 心の中で呟いたはずが、言葉として口から漏れてしまった。

 おそらく、クラスのみんなはこの事知らないはず。絶対に口を滑らさないようにしよう。


 今更考えたところで何もならないので少し早いけれど、夕飯を作ることにした。

 両親と交わした一人暮らしをする上での最低限のルールは、 ①コンビニ弁当ばかりではなく栄養のあるものを食べること ②週に1度ぐらいは、LINEをよこすこと ③お金が無くなっても直ぐに送ることは出来ないから、お金を考えて使うこと ④女の子を部屋に入れる時は節度を守ること ⑤お酒やタバコは20歳までダメだから隠れて使用しないこと。

 だ。後半の2つは絶対言わなくても分かる。けれど、一人暮らしをしたからといって調子に乗らないように両親なりに考えてくれたのだろう。

 過保護なんだから。やれやれ。

 炊飯器にお米と水を量って入れ、ボタンを押した。味噌汁は、インスタントのものにしよう。

 主菜と副菜はどうしようかな?冷蔵庫の中何残ってるっけ?

 冷蔵庫を開いてみると、想像以上に何も無かった。あるものと言ったらケチャップや、マヨネーズなどの、調味料だけだった。

 買い物からか〜。気持ちが少し重くなってしまった。今日は出前取ろうかな?いや!この調子だと一人暮らし生活が終わってしまう。

 それに、一人暮らしが終わってしまうと、せっかく出来た友達とも会えなくなってしまう。

「それはやだなっ!」

 そう言ってクローゼットから、外に着ていっても大丈夫そうな服を取り出した。

 洗面所で少しだけ髪を直してからマンションを出た。

 最寄りのスーパーまでだいたい100mほど。前に住んでいたところだと、どれだけ近くても最寄りのでさえ1kmは離れていた。

そんなことを考えているうちに目的のスーパーが見えてきた。

都会って何かと便利だな。

僕は、ショッピングカートに買い物かごを乗せて野菜コーナーに行った。新鮮なキャベツが目に止まった。

そうだ!今夜はロールキャベツにしよう。そうしたら野菜も取れて美味しい。決まりだ!

「あら?相馬くん。今日は、よく会いますね」

30分ほど前に聞いたことのある声が聞こえてきた。

嘘だろ…



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テンションが高いので(近況ノート参照)予定よりも早く2話を上げることにしました!

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