第5話 寸止め地獄に落とされて
向井さんの手が僕のジーンズをゆっくりと引きずり下ろすと、そのまま足から抜き去った。
僕は上体を里緒菜さんに支えられ、足は伸ばしたまま。
水色のボクサーブリーフ一枚にされてしまう。
そして僕の股間は思い切り膨れ上がっている。
こんな格好を女子大生四人に見られているなんて。
顔から火が出そうなくらいに恥ずかしいのに、すごく興奮してしまう。
「もうばればれだね。本当に、テント張ってるみたい」
里緒菜さんの声が優しく響く。頭の中で反響している。
そして、向井さんが僕のブリーフをじわじわ引きずり下ろす。
ぷるんとした感触があって、先端が空気に触れる。
「きゃあ、ピンク色の亀頭くんこんにちは」
向井さんの横で見てる遠藤さんがはしゃいだ声を上げた。
かわいい、きれいな色、そんな声も上がる。
「それと、この匂いね。イカ臭いって言うけど、あたしこの匂い好き。なんかうっとりしちゃうよね」
向井さんが僕の股間に顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
その手がさらに引かれて、僕の股間はとうとう丸出しになった。
「高校生にしては、陰毛は薄めだね。でも、このくらいがいいよ。あんまりもじゃもじゃだと汚く見えるから」
里緒菜さんの手の平が、当然のように僕のたまたまを掬い上げ、転がすようにする。
その感触はゾクリとするような快感だった。
そして、もしそのまま力を入れられたら、恐ろしい苦痛が襲ってくる。
男の最大の弱みを握られているのだ。
その快感とスリル。それに僕はもう押し倒されそうだった。
「じゃあ、サイズ測ってみようね」
何処からか取り出されたメジャーが、遠藤さんの手にはあった。
そのメジャーを僕の物の根っこに押し当てると、先端を引っ張るきりきり音がする。
「ええと、11センチかな。日本人の平均が13センチくらいだったから、平均よりは小さめだね。でも、まだ成長するから大丈夫よ」
横からじっくり観察している里緒菜さんが慰めてくれた。
「サイズは小さめだけど、亀頭がむっちり張り出してるのが格好いいよ。あたしこういう亀頭好きなのよね。立派な亀さん」
今度は遠藤さんが言う。
「触り心地もいいのよね。ムチムチして猫の肉球みたいで」
里緒菜さんは僕のそこを親指と人差し指でつまんで感触を楽しんでる。
「たまたま、デコピンしたらどうなるかな?」
今度は田中さんの恐ろしい発言。
それまでずっと傍観者的立場だった彼女は、もしかしたら一番過激なのかもしれない。
「ちょっと、それは勘弁してください。痛くて死にますよ」
僕はたまらず叫んだ。
「痛いのより気持ちいいほうがいいに決まってるよね。じゃあ、手こきショー行こうか」
向井さんの言葉に、すぐに田中さんが被せてきた。
「その前に、M字開脚に縛ったほうがやりやすいよ。縄もう一本あるでしょ」
「ガチガチに縛り上げるの好きだよね、理沙って」
向井さんが田中さんに縄を渡した。
ブリーフも取り払われた。
全裸にされた僕は、更に両足を広げられ、膝をたたまれたまま縄がかけられた。
田中さんの細くて白い腕が、僕の足首に縄を巻いていく。
その縄がくるくると巻かれて、畳んだ足は伸ばせなくなる。
カエルみたいにがに股で、なんとも恥ずかしく、情けない格好になってしまった。
股間もお尻の穴も丸見えで、全く抵抗できない。
目をつぶって現実逃避してしまう。
「じゃあ、ついでに目隠しもしてしまおうか」
遠藤さんが言うけど、里緒菜さんは反対した。
「目隠ししたら表情が見えなくなるよ。やっぱりミチルくんの顔が見えたほうが、あたしはいいな」
「それもそうね。苦痛の表情、快感に悶える表情、そういうのは大事だからね」
四人は僕のことを何かの実験動物みたいに観察しているのだ。
愛とか人間性とか、そういうものとは無縁な、プレイというか何かの処置のようなそんな実験にかけられているみたいな気がしてきた。
「まずは、気持ちよくなってもらおうかな」
里緒菜さんはそう言うと、バッグの中からピンクの箱を一つ取り出した。
「これ、ア〇ゾンで一番人気のオナホなんだよ、ミチルくん、オナホって使ってみたことある?」
里緒菜さんが僕によく見えるように、エロいイラストが描かれた箱の中身を取り出した。
オナホ……、オナニーホールという商品が存在することは知っていたけど、オナニーするときは右手でしごくだけで気持ちよくなれるんだから、わざわざお金出して買ったことはないし、試してみたいとも思っていなかった。
僕はそう答える。
「食わず嫌いってところかな。でも、案外いいかもよ」
いたずら小僧みたいな笑顔が僕の胸にきゅんと来る。
僕はやっぱり里緒菜さんが好きなんだ。
こんな、変な状況になっているのに、僕の恋心というのか里緒菜さんへの思いはますます膨らんでいくようだ。
「最初にオナホにローションを投入します。量は多からず少なからず」
挿入口を上向きにされたピンクのオナホに、小さなボトルから透明のローションがぬるりと入っていった。
ふふふ、と笑いながら、里緒菜さんの手が僕のペニスにオナホをかぶせていく。
冷たい感触があって、ふわふわした、少し狭い入口に僕の物の先端が呑み込まれていった。
柔らかいものに包み込まれる、その心地よさにうっとりしてしまう。
そして、里緒菜さんの手がゆるゆると上下に動かし始めると、すっかり敏感になっている僕の亀頭がプルプルした感触に刺激されて、それだけで思わず声が漏れてしまった。
あ、あ……、すごく気持ちいい。
「あ、あん、だって。女の子みたいな声出しちゃって、ミチルくんは男らしい男子なんでしょ」
遠藤さんが、茶化しながら僕の胸に手をやって来た。
「男子なんだから、乳首なんて感じないよね」
そう言いながら僕のそこを摘まむようにする。
そしてくるくると乳首をひねってくる。
かと思うと、正面の向井さんが僕の脇腹を指先で撫でてきた。
僕は全身がやたら敏感になってるみたいで、その脇腹の感触もくすぐったさが何ともいえない快感に感じてしまった。
だめだ。どうしても声が漏れてしまう。いや。だめ。
夢中になってしまう。
「オナホを潰すようにして中の空気を抜くと、ペニスに吸い付くように密着するのよね。それにこのオナホ、ソフトタイプだから握る力加減で刺激の強弱も自由自在だよ」
里緒奈さんは右手を軽く動かしながら楽しくオナホレビュー。
他の三人も、怪しく蠢く僕の股間のものを注視している。
じゅぷっじゅぷっというオナホの擦れる音が卑猥に響いて、僕の頭の中はすっかり淫靡な桃色で染まってしまう。
じわじわと快感が積み重なっていく。もうだめだ。
ダイナマイトに点火される。--いく!。
しかし、その瞬間、というか一瞬前に、オナホの動きが止まった。
僕のペニスはビクンビクンと脈打ってるのに、射精感はなくて無情にも中断されたのだ。
「今いきそうだったでしょ。はい、寸止め一回目終了」
楽し気な里緒菜さんの声がすごく残酷に聞こえた。
愉快にしている周りのお姉さんたち。
それなのに、僕だけがひどい絶望感にさいなまれている。
「じゃあ、次は私がやるね」
今度は向井さんがオナホ担当になった。
しばらく僕の射精感がおさまるのを待って、向井さんはオナホを動かし始めた。
同じオナホなのに、さっきの里緒菜さんとはまた違う感触だった。
動かし方、それと柔らかいオナホを握る握力の強さで、僕のペニスに加わる刺激が著しく変化してしまうのだ。
すぐに僕は上り詰めてしまう。
しかし、やはりもう少しというところで、発射させてもらえない。
「はい、寸止め二回目終わり。次は沙織どうぞ」
向井さんの言葉で、またオナホ担当が交代した。
「もう勘弁してください。とりあえずでいいので一回射精させてください」
僕は目の前の田中さんに懇願した。首を回して里緒菜さんにも目で訴える。
里緒菜さんはそんな僕に笑いかける。
「とりあえずなんてないよ、それやったら意味ないでしょ。ミチルくんはやわな男子じゃないんだから、マンガの中の男の子は泣いてたけど、キミは泣いたりしないよね」
すごく酷な言葉を笑顔で言われる。この理不尽な気持ちをどう表現すればいいんだろう。
「そうだよ。寸止め10回は頑張らないとね」
オナホを柔らかく握りながら田中さんが絶望的なことを言ってきた。
泣きたくなる気持ちを僕は何とかしようと努力してるのに、10回なんて言われたら目の前が真っ暗になってしまう。
そして、僕がこんなに絶望の底にいるというのに、彼女たちはすごく楽しそうなのだ。
彼女たちはどうして楽しそうなんだろう。男をいたぶるのがそんなに楽しいんだろうか。
もしかして、これってSM?
SMと言えば鞭やろうそくというイメージで、痛いものだと思ってたから、今の状況を僕はSMだとは思ってなかった。
確かに縛られてはいるけど、気持ちいいことをしている、というのがSMとは結び付かなかったのだ。
でも、射精直前で止められる、この寸止めというのは、何度もやられていると快感が強いほどに苦痛に感じてくる。
三回目の射精感が立ち上がってきて、身体がビクンビクンと痙攣してくる。
腰が自動的に動いて、生命のエネルギーを思い切り発射したくなる。
しかし、僕の願いもむなしくロケット発射は中止され、思い切り引き絞った弓は、そのため込んだエネルギーをどこにも放出しないまま弦を緩められる。
もうだめです。許してください。
僕はとうとう声をあげて泣き出してしまった。
どうにも止めようのない感情の奔流だった。
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