この3ジャンル以外は落選する!?

 そもそも、出版社が主催する小説賞とは何でしょうか?


 なぜ出版社は、多大な費用をかけてそんなことをするのでしょうか?


 端的に言えば、新たに有望な小説家を見つけるためです。


 では見つけた小説家に何をさせるのかというと、自分の会社のレーベルで小説を書いてもらうわけです、当たり前ですね。


 ではIP小説部門で入選した作家は、どのレーベルで小説を出版するのかというと、集英社のダッシュエックス文庫で書くことになるようです。


 このダッシュエックス文庫、月々に発行している書籍を調べてみると、主にファンタジー小説と現代恋愛もののライトノベルを取り扱うレーベルだということがわかります。


 また、どういった作品に人気があるのかと言うと、人気作には現代恋愛ものが多いということがわかりました。


 つまり、ダッシュエックス文庫は、「男性向けのファンタジー小説と現代恋愛小説を主に発行し、現代恋愛小説で利益を出しているレーベル」と考えることができます。


 また、小説家のわかつ◯ひかる先生がyou tubeで配信している「わかつき◯かるの小説道場」(この考察でも大いに参考にさせていただきました、作家志望なら必見のch)によると、小説賞の最終選考は現役作家が選考委員として行うのですが、それ以前の2次・3次選考については、出版社の編集者が行う場合が多いようです。


 そういう視点から歴代の最終選考に進んだ作品を見てみると、


・現代ファンタジー

・異世界ファンタジー

・現代恋愛


 の作品が、バランスよく入っている場合が多いと感じました。(特に第12回の#2と#3、第13回の#2が顕著)


 もちろん、毎回その3つに分類できる作品が最終選考に残っている、というわけではありませんし、そもそもいまライトノベルを書いていれば、この3つにはどこかで引っかかる気はします。


 ですが、これらの作品をなるべく最終選考に残そうとしていること、残す作品のジャンルが偏りすぎないようにしていることは確かでないかと思います。


 つまり出版社は、自分たちが出版しているジャンルの小説を、序盤から魅力的に書ける人間を探しており、そのため、最終選考に残す作品は、この3ジャンルの作品の中から、なるべく内容が被らないように選出する、という傾向があると考えられます。


 つまり、私の小説が3次まで残った理由のひとつは、ジャンルがではないか。


 もっと言うと、異世界ファンタジー作品がではないかと思う訳です。


 もちろん、異世界ファンタジー作品が私の作品一つだけ、ということはありえないでしょう。


 ですが、最終選考に残す作品のジャンルが偏りすぎないようにしているということは、その前段階である2次選考でも同じことが起こっている可能性があります。


 つまり、異世界ファンタジーの中でも、ギャグ寄りやシリアス寄り、古典的からなろう向けまで様々なジャンルがあり、審査の初期段階ではそれらの作品を、なるべく満遍なく揃えておきたい、という思惑が存在するのではないか。

 

 そのうえで、今回はシリアスファンタジーというか、私の小説と似たような読み味の作品が少なく、結果的に3次選考までほとんど他作品と競合することなく通過した。


 そして3次選考で初めて他の作品、この場合「転生したら勇者しか抜けない剣が刺さった岩だった~勇者が来ないのでゴーレムになって自分で探しに行く!~」とぶつかることになり、結果なすすべなく叩き潰された、というのが事の顛末ではないかと思う訳です。


 であれば、考えられる最適戦略はひとつしかありません。


・現代ファンタジー

・異世界ファンタジー

・現代恋愛


 この3ジャンルの小説を書く、それだけです。この3つを売るレーベルでデビューしようというんですから、それしかありません。


 ライトノベルを書いているなら、多くの作品がこの中のどれかに該当するとは思いますが、中にはこの3つに含まれないラノベもあります。


 推理、サスペンス、歴史などです。これらを書くのは諦めるか、どうしても書きたいという場合は、強引に3つのジャンルに紐づけてしまいましょう。


 たとえば書いたのがゴリゴリの推理小説だとしても、まず冒頭でヒロインを出して主人公との関係性を描きましょう。もし冒頭に登場するのがヒロインでないのなら、ガワだけ魅力的な美少女にしちゃいましょう。


 そうすれば、選考する人間がそれを現代恋愛ものだと勘違いして、評価にプラスに働くかもしれません。たとえそのヒロインっぽい女の子が、21ページ目に儀式殺人の生贄にされて、面白オブジェ的な死体になって時計塔の上に晒されるとしても、この審査形式ならばそんなことはわからないので、やる価値はあります。


 ……と、いうのはいささか極端だとしても、なるべくこの3ジャンルの小説に見せかける努力は必要ではないでしょうか。

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