致命的な問題点

 いかがだったでしょうか。


 あらすじだけでも、私の感じた「IP小説部門に応募する上での致命的な問題点」について、理解していただけたのではないでしょうか?


 基本的なクオリティや、文章力そのほかの無数の問題点についてはさておいて、私が最も気になっていたのは2点、すなわち「斬新なアイデアとか欠片も無い」点と、「先の展開を期待させ、序盤で読者を引き込むような工夫を、特にしていない」という点についてでした。


 読んでいただければわかると思うのですが、この小説、他とは違う変わったウリになる部分とか、目を引くアイデアとか全然ありません。普通のハイファンタジーの、特に生まれの秘密とかもない一般人の、ちょっとひねくれた生い立ちの話です。


 さらに言うなら序盤も序盤の展開をゆっっっっっっくり書いてます。そして主人公以外の名有りのキャラが出てきたと思ったら、そこで紙幅が尽きたのか唐突に終わってます。読者にはこれがどんな話だか全然分からないし、従って先に期待もできません。できるわけがない。


 IP小説部門のIPとはアイデア・プロローグの略だといいます。つまり魅力的なアイデア、魅力的なプロローグを書く力を試す賞であるわけで、その両面についてピンポイントに欠如しているという、割とどうしようもない状況であったわけです。


 いちおう、先の展開を期待させることについては、応募する際に頑張りました。後付けですごく足掻きました。


 どういうことかと言うと、冒頭とタイトルをいじりました。


 そもそも冒頭部分を応募しているわけですが、そのさらに冒頭、書き出し部分にシーンを追加しました。主人公が何やら重要な舞台で、少女に手も足も出ず敗北するシーンです。


 これを加えることで、「なんか……主人公がまず挫折して、そこから再起するストーリーなんだな?」みたいな印象を与えようとしています。


 もうひとつはタイトルです。あのクソ長いあれです。


 「ブレードオブデザイア  ~憧憬と宣誓と出会と焦燥と嫉妬と孤独と憎悪と敗北と挫折と諦念と陰謀と死闘と勝利と栄光と今更のそのすべて~」うん、長い。


 読者を引き込む云々というなら、このタイトル見た瞬間に読む気を無くされそうなものですが、これは先の展開をチラつかせるための苦肉の策でした。チラつかせるというか、長文タイトルにして直接書いちまえ、という相当にアレな発想です。


 なんか少年が剣の道を志すんだけどすごい才能の少女と出会って、物凄く嫉妬して努力するんだけど全然追いつけなくて、空回りと迷走を繰り返しながら最終的に決定的な敗北を喫して心がぽっきり折れて、見る影もないくらい憔悴してすべてを捨てて無気力なまま生きようとするんだけどそこで国家を揺るがす陰謀に巻き込まれて、捨てたはずの剣腕で切り抜けるうちに今更望んでもいない英雄ロードを駆け上がってゆく、みたいな内容を予想してくれやあー!!(懇願)みたいな意図が込められています。タイトルに。


 小説の意味について考えてこい、というかそこまでするなら普通の長文タイトルにしろ、と言いたくなるような方法ですが、他に思いつきませんでした。何しろ本文では、このタイトルの”出会い”の部分までしか書けていません。これで後の内容を推測しろというのも無理なレベルの序盤であり、あるまじきスローペースです。


 そもそもIP小説に送るつもりで書き始めた作品ではないのですが、自分って序盤の引きを作れていなかったんだなあ、と、自身の小説のダメなところがわかってなんだか勉強になってしまいました。


 というわけで泥縄もいいところの付け焼き刃で体裁を整えようとしたのですが、もうひとつの「斬新なアイデアが無い」点についてはさらにひどいです。付け焼刃な方法すら見つからず、どうしようもなくなって放置してます。


 つまりは、全くの無策です。


 私は、IP小説部門はアイデア勝負の賞だと思っていました。なので、特に変わった部分など全くないこの小説では、だれの目にも止まらずスルーが関の山だと思っていました。


 当然のように、1次で落ちるだろうと思っていたのです。


 それだけに、この小説が2次選考を通過したのが不思議で仕方ありませんでした。


 次回からは、IP小説賞についての分析と考察を交えながら、自作がなぜ3次選考まで残ったかと、今後に生かすべき点について書いていこうと思います。


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