財布を落とした→交番に行った→交番がなかった(呆然)

藍銅 紅(らんどう こう)

財布を落としました

 財布を落としました。

 財布を落としました。

 財布を落としました……。


 買い物をして、自転車に乗って、自宅に戻り。

 そして、カバンを肩から降ろそうとして……ん? なんか軽いぞ? と、違和感を覚え……。

 すると、いつも財布を入れている、カバンの横ポケットのファスナーが全開……。


 あ、あれ?


 カバンをひっくり返す。

 財布がない。


 あ、あれ?


 買ったものを入れたエコバッグを見る。

 肉と野菜とレシートはある。

 が、財布はない。


 思考停止。

 思考停止。

 思考停止。


 あ……、財布、落とした……の、か……。


 慌てて、自転車をかっ飛ばして、買い物をしたスーパーに戻る。

 道中、落ちていないかと、目を皿のようにして道路を見つめながら。


「あの、すみませんっ! 財布落ちてませんでしたか⁉」


 スーパーの店員さんに聞くけど無情にも「ありません」


 スーパーの近くに落ちていないかうろうろするもなし。


 ……とりあえず、交番に行こう。


 そのスーパーのすぐ近くには踏切があって、その踏切を渡った先、歩いて三分くらいのところに交番があったはず。


 自転車に乗って、交番に行く。

 一番近い交番だし、すぐそこだから、落としたなら、届いている可能性は高いはず……。


 で、踏切わたって交番へ向かった。


 すると……。


 交番が、ないっ!


 もう一度言いましょう。


 交番が、ない!


 え、え、え? 交番てなくなるものなの?

 うっそ、どういうこと?

 わたし、交番の位置、間違えて覚えていた???


 この時点でややパニック。


 財布を落としても、交番に行けば大丈夫……と思っていたのに、交番がない。


 うろうろしているうちに、わかりました。


 交番があったと思しき場所が、更地になっている。


 工事中だ。


 えーと、言うことは、移転? 建て替え中?


 よくわからないけど、工事現場のお兄さんに聞いてみる。


「すみませーん、ここに、交番があったと思うんですけど……」


 工事のお兄さんは、工事しているだけで、何の建物があったのかなどは知らないとのことで。

 でも、「どうかしたんですか~」と事情を聴いてくれて。


「あ、あの。財布落として、ここに交番があったはずで、だから、来たら、交番がなくて……」

「えーと、近くの交番は……あっちとこっちなら、あっちの方が近いかな……」


 親切にも、スマホで地図検索までしてくれて。


 ありがとおおおおおおおお……と、思ったけど、どっちの交番もちょっと遠い。


 どうしようと思っていたときに、はっと気が付く。


 財布の中には銀行のカードが入っているっ!


 交番に行くより先に、カード止めないとっ!


 落としたとわたしは思っているけど、盗まれたのなら……銀行のカード使ってお金が引き出されてしまう可能性もあるっ!


 工事現場のお兄さんにお礼を言って、慌てて帰宅。


 銀行に電話をかけまくって、とりあえず、カードを止めてもらう。

 その際に、お金が引き出された形跡はないかどうかも聞いてみた。


 うん、引き出されていない。

 それは大丈夫。


 銀行オッケー。じゃあ次は。


 警察に電話。


 どこに電話をかければいいのかわからないので、110番にかけて、財布を落としたと言ったら、管轄の電話番号を教えてくれた。


 ありがとうございます。


 その番号にかける。


「届いてはいないですねぇ。ですけど、財布を落として、まだそんなに時間が経ってないので、データが反映されていない可能性もあります」との返事。


 そして「とりあえず、近くの交番に行って、遺失物届を出してください。交番に財布が届けられれば、ご連絡できますので」


 ありがとうございますとお礼を言って、またもや自転車にまたがって行く。


 さて……どの交番に行くべきか。


 落とした場所に一番近い交番はなくなっていた。

 じゃあその次に近いのは?


 考える。

 仮に拾った人がいてくれて、その人が届けやすい交番はどこだろう?


 駅に近い交番に行ってみる。


「すみませーん、さっき財布を落としたんですけど」


 で、遺失物届を書いて……、それを処理してもらって。書類提出して、じゃあお願いします……と、交番から出ようとしたとき。


 対応してくれた警察官とは別の警察官の人が「あれ? その財布と特徴が似ているの、さっき届けられたよ」と。


 え、え、え⁉


 拾得物として処理中と思しき財布が……あああああっ! それ、わたしのっ!


「ご本人確認とかさせてください」と言われたので。


 マスク外して、財布の中のマイナンバーカードと顔を照らしあわせて。

 保険証とか見せて。

 本人確認オッケー。


 無事、財布は戻ってきました。


 お金も多分そのまま。

 なくなっているものはない。多分。


 まあ、財布の中はぐちゃぐちゃでしたが。


 これはたぶん、警察の人が、内容物を確認した上、テキトウに財布にカードとかお金を放り込んでいたからなのでしょう。うん、問題なし。


 あああああ。

 ほっとした。

 財布落として、死ぬ思いでした。

 わたし、クレジットカードとか、電子マネーとか使わない派なので。

 給料銀行振り込み→現金。使うカードは交通系だけ。なので。

 現金ないと、生活ができませんっ!


 あー、財布が見つかった瞬間には、ホントに涙出そうになりました。


 交番に財布を届けてくれたかた、ありがとうございます。

 工事現場のお兄さんもありがとう。

 電話応対してくれた方にも感謝。

 財布を落としても、ちゃんと戻ってくる。日本て素晴らしいっ!


 うん、これからは、財布にチェーンをつけて、カバンに引っ掛けておこう。

 それと、財布は二つに分けよう。

 普段の買い物用と、銀行でお金を引き下ろすようとに。

 財布落としたときでも身分証明ができるように、免許書とかマイナンバーカードとかを財布に入れっぱなしはやめよう。銀行のカードも、もう財布には入れないぞっと。



 そんなこんなで、今まさに、交番から戻ってきたところです。

 気持ちを落ち着かせるために、エッセイにしてみました。


 皆様も財布の管理は気を付けて。

 そして、道端に落ちている財布をみかけたら。

 どうか、近隣の交番にとどけてくださいませ……。





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財布を落とした→交番に行った→交番がなかった(呆然) 藍銅 紅(らんどう こう) @ranndoukou

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