最終話 最強魔王、反省も後悔もしない
ある日、魔王軍は地上から撤退した。
急に各地での戦闘行為をやめ、まるで慌てた様子でいなくなったのだ。
誰もが目を瞬かせた。
圧倒的な軍勢でありながら何故魔物たちが退却したのか。
きっと更なる大攻勢が待ち受けているに違いない。
そう思って気を張る兵士は何人もいたが、いつまで経っても魔王軍はやって来なかった。
それから数日後。
連合軍は魔王軍が『大穴』の底へと向かって行ったと大々的に世界へ公表した。
わけの分からない勝利ではあるが、勝利は勝利。
人々は沸き立ち、一ヶ月にも及ぶ戦勝記念パーティーが各地で行われた程だった。
では何故、魔王軍が撤退をしたのか。
それを知る人間は地上におらず、魔界に一人だけいた。
魔界。
そこは本来ならば極寒の地であり、この過酷な環境で生きていける生物や植物は限られている。
……はずだった。
「バルディン様、今月の収穫作物量です」
「あ、ああ、助かった。……今月も多いな。食べ切れないぞ」
「地上から連れ帰った牛や豚、鶏などの飼料に回しましょう」
「そうしてくれ」
今の魔界は地上の動物や作物が育つくらい平穏な環境となった。
何故かと言うと――
「バルディンさん!! 助けてください!!」
「こらー!! 逃げるなー、ゴミ子ぉ!!」
「ひいっ!! 私の名前はマリアリッテですぅ!!」
クリューネに追われてマリアリッテが涙目で俺の部屋に入ってきた。
マリアリッテは今、魔界で暮らしている。
それは彼女が自ら望んだことだが、今にして思えばありがたい決断だったと思う。
というのも。
「うわ、眩しっ。ちょ、マリアリッテ、昼間は部屋に来ないでくれ!!」
「酷いですよ!!」
「……何度見ても不思議な光景ですね」
いつの間にかサングラスを付けていたアルメナが淡々と言う。
マリアリッテは光っていた。
正確にはマリアリッテの大きなおっぱい、その先っぽ。
乳首が光っていた。少し光るわけではない。
まるで太陽のように目が焼けるような光を放っているのだ。
不思議なのは近づいても熱くはないのに、ものを温める性質があること。
まさに二つの太陽である。
というかマリアリッテは半日ほどクリューネに抱えられて空を飛び、魔界全体を照らす文字通り太陽となった。
どうして乳首が光っているのかは分からない。
なんか魔界の魔力が反応しているらしいが、詳しい原理は不明だ。
でも時間で言うと夕方くらいに光が弱まって、夜になると完全に消える。
そして、また朝がやってくるタイミングで眩しく光り始めるのだ。
まじで意味が分からん。
「でもこれって、地上で聞いた予言の通りになってんだよな……」
魔王は二つの太陽を供とした白き勇者によって魔界へと追いやられ、封印される。
そして、二度と魔王は魔界から出てこない。
正確には封印なんてされていないし、出ていけないわけじゃない。
ただ魔界から出ていく理由がなくなってしまっただけだが。
まあ、そのお陰でおっぱいのせいで負けることもなくなった。
代わりに魔界の統治で忙しいが……。
魔王としてのプライドを損なうよりは遥かにマシだろう。
「うぅ、こんなの羞恥プレイすぎます……」
「……まったく。マリアリッテ様、そのような泣き言をおっしゃらないでくださいませ。貴方はバルディン様の妃なのですよ?」
「それとこれとは話が別です!! なんですか乳首が光るって!! 思ってたのと違います!!」
妃。そう、妃なのだ。
ちょっと俺自身まだ実感がないのだが、俺はマリアリッテと結婚した。
ちなみに夜の上下関係は彼女の方が上である。
清楚なのに夜になると激しいというか、単純に俺がおっぱいに弱いだけなのだが。
「……本当に眩しいな……」
地上への侵攻が無意味だったとは思わない。
だってそうしなければ、魔界が救われることもなかったからな。
反省も後悔もないし、しない。
終わり。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「乳首が光るオチ、個人的には過去最高で好きなんだ」
バル「この終わり方で本当にいいのか?」
「乳首光ってんのは草」「マリアリッテが可哀想すぎる」「こんな展開が好きなのか……」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
最強魔王は地上を征服中、でも美人勇者たちのおっぱいが凄すぎて戦いにならないんだが。 ナガワ ヒイロ @igana0510
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