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「だから、そんなんじゃないってば」
我慢することなく、こみ上げた苛立ちを彼にぶつけた。いつまでたっても同じ台詞を繰り返されて、私もいい加減うんざりしてしまっていた。
今日はハンバーガーもポテトも頼まず、ドリンクのカップだけが私たちの前にある。彼のコーラと私のオレンジジュース。ヨダカは不満そうにむくれた顔でコーラを口にして、何も言わない。同い年のその余裕が余計に私を苛立たせる。
「異常だのおかしいだのって。私、放っといてって言ったでしょ。私も剛史も不満はないの、ただ二人で生きてるだけなの。悪いことをしてるわけじゃないんだから」
相変わらず、ヨダカは私たちの関係を共依存と呼んだ。このままでは良くないと、訳知り顔で諭すように言った。彼の台詞の中に母親や柊哉の顔までがちらついて、私は我慢ができなくなった。
「歳の差なんて今どき関係ないし、剛史の言動がヨダカにとって不満でも私には許容範囲なの。お互いに愛していて、理解し合ってるんだから、当然なの」
愛してるなんて恥ずかしい台詞に羞恥を覚えないほど、私は興奮している。ヨダカはカウンター席の真正面にそびえる壁を、頬杖に乗せた顔で見上げている。細い首を反らせて、私とは対極的な態度で何かを考えている。その何かは、間違いなく私の気に入らない。
「共依存なんて、まるで病気みたいなこと言わないで。ヨダカは剛史に会ったこともないのに、私たちの関係を決めつけないでよ」
知らない内に、めちゃくちゃなことを言っていた。剛史とヨダカが会って一番困るのは私に違いない。なのに、そんな台詞が出るほどに、私は彼の言葉や態度に腹が立っていた。
私が更にまくし立てて、やっと一息ついて、オレンジジュースのストローを咥えた頃、彼は「分かったよ」と壁を見上げたまま呟いた。
「俺はもう、唯依とそいつの関係に口出ししない。二人は幸せで、悪い所なんか一つもない。全ては俺の勘違いだった。そう認識する」
納得したというよりも、自分に言い聞かせる口調なのが気にかかったけど、私は頷いた。私たちは異常じゃない、お互いに相手を必要としている恋人同士に間違いない。自分が自分へそう言い聞かせているのに、私は気が付かなかった。
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