第7話

 結論から言えば今日の仕事は散々だった。

 注文を受けたメニューは作り間違え、カウンターの常連客との話も上の空、しまいには盛大にグラスを割った。

 …それもみんなあいつのせいだ。

 だいたいなんだあの最後の言葉は。

 はるかの"はる"は陽という字だからってなんだっていうんだ。

 良く使われる字だろうし、変わった意味なんかない。


 高校入学…今年16になるのか。

 産まれた時期を考えると…絶対に違うといえるのか?

 いやいや、父親だっているんだし、父親も似たような名前なのかもしれない。

 もし万が一そうだったとして、何故彼女はいなくなったんだ?それにそんな相手の名前を子どもにつけるか?



 …あぁくそ。なんで俺がこんなことで頭を悩ませないといけない。

 まだ幼いあのこに見事に翻弄されている。


 彼女と過ごしていた頃の記憶を引っ張りだしてみるが、2人でベロベロになって朝まで飲んだとか、一見クールなくせに笑うと可愛いとか、抱いたときの甘い声とか…そんなんばっかりだった。

 まったく役にたたないな俺の記憶。

 最後に会ったのはあの日…俺があの人に呼ばれた日か。その少し前に会ったときに…シたな、たしか。

 もしかしてあのとき?

 いや、もう確かめようもない。考えるのはやめよう…


 部屋に戻りシャワーを浴びて、今日はもう寝てしまおうと、強めの酒を煽りベッドルームへ行こうとすれば、スマホが通知音をならす。

 …なんだこのタイミングで。

 ロックを解除すればあの人からのメッセージだった。

 今度の休みに家に来ないかとの内容。

 良かった、今日は呼び出しじゃなかったな。

 短くわかりましたとだけ返して、その日は眠りについた。

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