エロマンガのデッサンの為にヌードモデルを呼んだら同級生が来た件っ!?

なつめx2(なつめバツに)

第一部

第一話 女子高生風(希望)美少女(願望)のヌードモデルが遣ってきた!

 俺は学園にもクラスの友人(居ない……コトは無い…ぞ?)にも秘密にしているが、実は商業誌デビューも単行本デビューも済ませたプロのマンガ家だ。担当編集者も付いている。


 何故、秘密にしているかと言うと……俺の描くマンガが【アダルトカテゴリー】だからだ。


 4月の終わりに無事(笑)18才の誕生日を迎え、一気に商業誌&単行本デビューしたという訳だ。

 担当編集者は、実は同人活動を始めた中三の頃から付いていて、デビューを機に二代目の担当編集者に代わったのだが……。

 美人なのは良いが、年上のお姉さん風を吹かせたいタイプで、しかもちょっといるので、正直困っている。


 過日、新作の為のヌードデッサンをしたいと申し出ていたら二つ返事でOKが出たんだが……。

 遣ってきたのは(確かにプロポーションは……いや、悪くなかったが)母親と同じくらいの歳の〝オバン〟だった。

 いや、母親相手にたんだろう……と言ったら二代目担当編集者の笹目ささめ 沙耶香さやか女史に睨まれた。

 いや、特殊な性癖でもあれば別だとは思うが……普通の健全な男子高校生だったら、だろう。


 当然だが、いくらプロポーションが良くても、勃起しない相手を描いても絵にはならない。

 エロマンガの担当編集者なのに、何故それが判らないのか?



 それから二月ふたつき後、今回の新作はデビュー10作目の記念作でもあり、俺としても力が入っていた。

 無事ネームも通り、作画に入る前に、今回もヌードデッサンをしたいとお願いした。

 特に今回は女子校生がヒロインなので、をお願いしたい……できれば女子校生に見える人が望ましい、と注文を付けた。

「前回のようなコトは……」

 と、言い掛けると沙耶香女史が真っ赤になって怒りだした。


「な、何よぅ⁉……代わりにわたしの裸をデッサンさせてあげたじゃないっ⁉」


「いや、裸でなく、下着姿でしたよね?……しかも、キャミ着てたしぃ!」


 前回の〝オバン〟モデルを追い帰し……いや、お帰り戴いた後、前任の担当編集者に電話した沙耶香女史は「お前が代わりにヌードモデルをやれっ!」と命令されたのだった。

 この時、俺に聞かせてイニシアチブを取るつもりでスピーカーフォンに切り替えていた沙耶香女史だったのだが、先輩編集者の逆鱗に触れた台詞を俺に聞かれて青褪めていた(笑)。


 ……と、言う訳で沙耶香女史の下着+キャミ姿でデッサンしたのだが、当然不満は大きかった。

 乳首もアンダーヘアも、いや、臍すら見えてないしぃ……ポーズも不満タラタラで駄目ダメだったしぃ……結局一人になってから、写真集やらDVDで補正したのだった。

 もう、思い出したくもない。

 なのに……


「わ、わた、わたしの……は、はは、裸が見たかったら、諭吉が立つくらいのを用意しなさい……よねっ!?」


 言ってろよっ!?

「いや、ノーサンキューです(笑)」

 俺はソッコーお断りしたのだった。


「むうぅ!?」


 怒っているっぽいが、知らんがな(笑)。


          *


 そんな訳で、ヌードデッサンの日。

 俺は期待に胸を膨らめ(いや、胸だけだぞ(笑))待っていた。

 そして、女子高生風(希望)美少女(願望)のモデルさんが遣ってきたのだった。

 約束の午後1時10分前(10分前って、偉い(笑))にインターフォンが鳴り、開けた扉から入ってきたモデルさんを見て、俺は固まっていた。


「本日はご指名を戴きありがとうございました。『モデル派遣の華園はなぞのカンパニー』所属、花棲かすみ 可憐かれんでございます。気軽に『可憐』とお呼びください♡」


 深々と下げていた頭をあげて俺と正対した彼女も、瞬時に固まった。


 そこに居たのは、同級生の片桐かたぎり 花楓かえでだったのだ。同級生というだけでなく、隣の席だったりする。

 いや、隣の席だがあまり話をしたコトはないんだが。

 それは、俺がだからじゃないぞ(いや、なくもないが)。

 だって、彼女はウチの学園で一、二を争う美少女だからだ。

 俺如きが声を掛けるなど、畏れ多いというモンだ。

 内緒だが、授業中に彼女の横顔を盗み見るのが俺の密かな楽しみだったりする。


 それにしても、彼女は何故か、ウチの学園の制服姿で来ているのだが。

 いや、頼んだのは、ヌードモデルなんだけどぅ!?

 彼女で大丈夫なんですか……ね?


 一瞬の後 ――


「ヘ、へ、部屋を間違えました~~~っ!?」

 回れ右をして出ていこうとした花楓の(いや、可憐の?)肩を沙耶香女史が、がっしり、掴んでいた。


「大丈夫ですよ、花棲 可憐さん……ここで合っておりますっ♡」


 沙耶香女史は彼女を知って居るっぽい。

 何となくだが、嫌な予感がするのだが。

 いや、厭な予感しかしないのだが。

 沙耶香女史が、何か感しかないのだが。


 そして、改めて花楓を(いや、可憐を)俺に正対させた沙耶香女史が厳かに(そういうの止めてください(笑))言ったのだった。


「こちらに御座おわしまするのが、まんが家の如月きさらぎ キメラきめら先生でございますわんっ♡」


(な、なな、なんで……モブくん、じゃなくて夛茂たもくんが居るのよぅ!?)



            【つづく】

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