自選短歌集

2024年11月

死にたい、とは言わんけど　砂浜で干からびているクラゲをつつく

もう何も明るくなるな　醒め切った僕を焼き切る暁の空

なあ俺は全力出してなかったか？教えてくれよ、スキマスイッチ

「カーテンを開けて。開けろよ。」アレクサを蹴り上げかけた　冷静になった

せめて苦しくないように地獄にも薬を持っていけたらいいな

一度だけ黄色い線を越えてみたくて　急行の風が鼻を掠める

屋上を飛び回ってる地縛霊　ぼくの背中も押してください

雪は好き　雑音を消してくれるから　私を匿ってくれるから

用量を超えた二錠の弾丸が一人の夜と私を撃って

日を避けて活動してる吸血鬼なので一日の始まりもない

蚊が家を通りがかって殺されるように車に撥ねられて死ぬ

空も飛べない地球人　隕石でキャッチボールする宇宙人

冥府から届くクジラの慟哭に僕は冷たい海を渡って

テーブルに灰が積もったワンルーム　命を語り続けるラジオ