秘密。
蜜とは違う、ほろ苦さのある甘み。
その後味は一人で味わう時のものとはどこかが違っていて。
幼い頃の「芹山三日月」が見つけた木漏れ日広場。他の人間に会うことのないそこは、自分がお姫様になったかのように思わせてくれる特別な場所であった。そこの自動販売機に売っていた珍しい飲み物を目当てに、高校生になった今も訪れているのだが……。
関わることのないと思っていた自分とは対極の存在からの突然の接触から始まる恋。秘密の場所という自分だけの庭。心の内側への訪問者に対する驚きと慣れ親しんだ味による安心感。それらを一気に優しくかき混ぜるような、忽然と変化する日常を魅力的に描かれていました。
主人公のメルヘンな性格と綺麗な描写、表現からファンタジー感を覚えながらも、ココアの味や木漏れ日の光、学校での一幕などが現実に繋ぎ止める鎖になっているようで気持ちのよい没入感を得られました。
是非、自分の知っているものが知らないものに変わる時の素敵な感覚を味わってみてください。
素晴らしい作品をありがとうございました。