パンツの話し

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　その昔、私が２０代後半だった頃、都内に乗り入れていた人気沿線の駅前にある賃貸不動産屋で営業事務をしていた時のお話です。

　そこには私より若い女子社員の先輩が一人おりました。

　ある日のこと、オフシーズンの暇を持て余した若い女子社員が沿線にある高級住宅街に住む顧客でもあったお金持ちのゴミ出し事情について私に話をふってきました。

　そこの奥様は小学生の娘さんに買った有名ブランドの服をシーズンが終わるごとにごそっとゴミ袋に入れてはポイっとゴミ集積所に出しているという事でした。

　小学生の娘さんが成長するにしても一気にサイズが合わなくなるわけでもないでしょうに一度か二度着ただけの高価な服をポイと捨てるなんて勿体ないと近所で噂になったとか。その話を聞いた私は捨てるなら欲しいよね、子どもいないけどと言いました。

　同じことを思う人がいるもので一人の強者（つわもの）がそこの奥様に捨てるのなら譲ってくれませんかと声をかけたそうなんです。すると気のいい奥様は「いいですよ、お好きなの持って帰って下さい」と快くゴミ袋を渡して下さったそうです。

　喜んだ強者はそれは素敵なワンピースにトップにボトムなどをウキウキして物色していたのですが、服に混じって下着のパンツが入っていたのを見つけたそうです。そこのお家の事なのでヨレヨレではなくまだ新しいものなんだろうと私はパンツについては特に何の感想もなかったので反応を示しませんでした。

　ところが件の若い女子社員は目を吊り上げて怒り出したのです。

　パンツを捨てる時は細かく切ってそれと分からないようにしてから紙に包んでナイロン袋に入れて尚且つ分からないようにゴミ袋の奥に隠すのが常識なのよ！

　えっ、そうなの？　ごめん、知らなかったです。

　下着を捨てるのにそんな厳密なルールがあるなんて、正直驚きました。

　私なんて洗濯した後に紙袋に包んで生ごみと一緒に出してましたよ。

　生ごみの中まで物色して私のパンツを探し出して持っていくような熱狂的なファンはいなかったのでそこまで用心してませんでした。もしいたとしてもそのパンツは生ごみの臭いがして本来の目的は果たせないと思います。

　それでも彼女は「親からどういう教育されてるの」とまで言って来たので私が間違っていたんだろうとその後はパンツを捨てる時は細かく切るようにしました。

　私は非常識だったんでしょうか。

　どうか淑女の皆様、私に正しいパンツの捨て方を教えて下さい。