第14話 今日のデート、楽しかったから

「フィー楽しんだ楽しんだ」

「楽しんでくれたなら何よりね」


あれから二人で楽しめる物は一通り堪能できた。

あざと可愛いキス返しでしばらく思考がまともに機能してなかったものの、ユリちゃんがしっかり治してくれた。

下ネタという奥義で。


おかげでこっちもはっちゃけられて楽しむことができたと思う。

さすがにクレインゲームのこと竿だなんだって言っちゃうのはどうかと思うけど爆笑しちゃった手前、何も言えないよね。


今は二人で外に出て来て彼女が持ってきた水で水分補給してるところだ。

見た目の地雷系衣装と相反してかなり気遣いもできる。

下ネタも時々見せるあざとさも彼女の持つ魅力のひとつかな。


「ユリちゃんこっち向いて」

「どしたん先輩?」

「あっ………」


こっちに顔を向かせた彼女に抱きつく形でツーショットを決める。


「困惑した可愛い顔いただいたよ♪」

「っ………」


かああってユリちゃんの顔が一層赤く染まっていく。

ってかもう真っ赤ってレベルだけど、罪悪感はしないなあ。

一日中リードされたり逆に誘惑されたりでムッとしてるとこだった。


これくらいの仕返しで済ませてるんだし優しいってむしろ褒めるとこじゃないかな。

『呼んでくれた娘ちゃんとデートなう!!』って適当に書き込んで先ほどプリクラで撮った抱きとめてるやつと一緒にアップロードっと。


「ユウミ先輩」

「うん?」

「アップ終わったの?」

「うん。キミの顔はしっかりぼやかしといたから」

「じゃあ………携帯借りるね」

「ちょ!?」


ユリちゃんに信じられないスピードでスマホが奪われる。

あの俊敏さはおかしいでしょ。

これがこの世界の女子の本気なの?


「わわっ」

「終わったよ。ありがとう」


数十秒しないうちにスマホと一緒に何かが握らされた。


「ネックレス………?」


スマホはポケットにしまい、一緒に渡された物をじっと眺める。

真ん中に黒バラがあしらわれたネックレスだ。


「今日のデート楽しかったから」


あたしのこと楽しませてくれたお礼って付け加えてにしっといたずらっぽく笑うユリちゃん。


「今日すごく楽しかったし次までその、あたしのこと思い出してほしいって意味合いなんだけど………その、受け取ってもらえますか………?」

「ユリちゃん………」


どうしよ。

メチャクチャ嬉しい。

女の子だって疑われないだけで嬉しいのにこういうプレゼントまでされるなんて。

微塵も思ってなかった。

完全な不意打ち。

ボクが女の子だったら間違いなく今のワンパンで恋に落ちてるところだったよ。


「さっそく付けていいかな?」

「っ………もちろんっ!!」


ボクの返事がよっぽど嬉しいのかいつの間に腕に抱きついてきていた。

つけるのにちょっと邪魔だけど………まあ、意識するほど強くしがみつかれてるわけでもないのでつける分には問題ないかな。

プレゼントされたネックレスをさっそくつけるとパシャリとシャッターの音が鳴る。


「はぁ………マジ無理。可愛すぎ………」


おっ、今のはちょっと地雷系っぽいかな。

うっとりとした目つきも片手で頬に宛がいながら呟く仕草もまさに前世のメンヘラそのものだった。


「中身は遠慮がないけど意外と配慮できる優しい娘なんだよね」

「何が?」

「ううん、こっちの話。ユリちゃん可愛いなーってね」

「まあ可愛く見せるために敢えてこの服仕立ててきたんだからね」


グルっと一回転するユリちゃんはとても楽し気でついつられて笑ってしまった。

この世界では『可愛く見られたい』って意味合いで地雷系着るのかな。

ボクとユリちゃんは会って僅か数時間しか経ってない。


それなのに「どうしてその服着たの?」なんて失礼すぎる気がする。さすがに聞けないよね。

ネックレスもプレゼントされたことだし次、レンタル彼氏に申し込んでくれた時にでも質問しちゃえばいいかな。


「また連絡したら今日みたいにデートしてくれるの先輩」

「当然だよ。ボクはレンタル彼氏だから指名してくれたらいつでも駆けつけるから」

「マンガみたいなセリフだー。もしかして誘い受けだったり」

「違うから。ってかそういう設定のマンガいるんだ」

「いるよ。一昔前に流行ったジャンルだけど」

「マジか………」


やっぱり男子が貴重な世界だからかな?

前世ではエロ漫画のネタにしかされなかった素材がそこら中に転がってるような………。

あとでイレナに聞いてみようかな。


「じゃあまた今度連絡するね。今日楽しかったよ先輩―!」


またね~って叫ぶ彼女がどんどん遠ざかって行く。


「ボクも帰ろうかな」


ボクが男として認知されて初めてのデートはこうして幕が閉じる。

マンガや小説のそれと比べられるほどではなかったものの充分楽しめることができた。

次はどんな展開が待ってるんだろう?

なんて淡い期待を胸に地図アプリに従い家へ戻るボクだった。

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貞操逆転世界でハーレム目的でレンタル彼氏始めたらヤバい女しか寄ってこない みねし @shimine0603

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