一つ工夫を加えることで、有名な物語もまったく違った味わいを見せてくれる。
この作品は、そんなホラーの新しい可能性を見せてくれました。
モチーフとなっているのは、あの有名な『ヘンゼルとグレーテル』です。童話の中では魔女に捕まった兄妹が、魔女のもとで働かされるという展開になります。
―――でも、その『捕まっている環境』が、とても過酷なものになったらどうなるか?
行きつく先は同じでも、そこに至る境遇や、最終的に命を奪われるまでの『ルール』が異なれば、物語はまったく違った様相を見せてくれます。
設定をハードモードにすることによって、既存の物語をまったく新しい味わいを持ったものに変えられる。この作品はそういうホラーとしての新しい手法とか、今後の可能性などを提示してくれた一作だと言えます。
童話の中では協力しあっていたヘンゼルとグレーテルの兄妹も、作品内では違った関係性を築き、思いもよらぬ『心理戦』のような展開を見せます。
無駄のない文章と構成で、圧倒的な緊張感を醸し出す本作。次へ次へとノンストップに読み進めさせられること必至です。