第10話
眩しい西陽が差す午後の授業が終わり、教室から人がいなくなる頃。世界は茜色に染まる。
高校3年生になると、放課後に教室で勉強をしてもよいという特権が与えられる。かつて僕を追い立てたホルンの音は、遠く、かすかだ。
窓際の1番後ろの席でひとり外を眺めていると、「お待たせ」という愛しい声。顔を上げてみれば、ドアから恋人がひょこっと顔を出している。僕は立ち上がって恋人に近づくと、その髪を撫でる。
「質問終わったの?」
「うん、終わった。」
「じゃあ帰ろうか」
「放課後デートみたいだね」
「みたいじゃなくて、放課後デートでしょ」
僕の目線より少し低い位置で、君がふわりと笑う。
茜色から薄闇に変わっていく帰り道を、ふたり並んで歩く。
明日はどこに寄り道しようか。
夫婦(仮)の恋愛事情 桐原あまね @amanekirihara
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