第1話 入学式
「まずは、皆様がこの学園に入学してきてたことを嬉しく思います。自己紹介が遅れました、学園長のアクラと申します。ぜひ覚えて帰ってください。」
今、体育館のステージで、話しているこの男、アクラは世界にも数少ない、魔術と剣術どちらもSランクの最強の男だ。
奴には、かなり警戒をしなければならない。
私は魔王であるが、英雄候補がうじゃうじゃいるこの学園で、奴と戦うのは洒落にならないことくらい分かる。
「この学園に入学してきた皆さんは、只者ではないことは理解してます。しかし、卒業時に学年から3人の英雄を選び出すとなると、簡単に卒業させるわけには行きません。」
そう言うと、学園長の後ろにあるグラフが映し出された。
「これは、例年1年生が退学する人数のグラフです。」
その説明を聞き、周囲はざわめき始めた。それもそのはず、入学者が約400人なのに対し、退学者は100人だ。
「皆さんが驚く気持ちもわかりますが、これは一年生のグラフ。つまり、ここから1年間だけで退学する人数です。卒業する3年後には、退学者は倍増するという訳です。」
ざわめきが大きくなり、少し学園長が困り顔をしたときだった。
「うるさいぞ。お前たち。」
謎の生徒の言葉は迫力と声量があり、その場は一気に静かになった。
「ありがとうございます。皆さんは、3年後、どれほどの生徒が残っているのか、気になっていると思います。それは次の通りです。」
これは例年の平均です。3年間の累計退学数は300人。そして、2年中期までの編入者数は100人。
「結論から申し上げると、毎年100人ほど退学しているということになります。しかし、退学者ばかりだすことは、学園として良くないこともあります。なので、退学者以上の実力を持つと判断した者を編入させることもあります。」
1年中期:20人、後期45人、2年前期5人、中期30人。
「編入は2年中期まで行います。2年の前期は退学の機会も少ないため、編入者の数も少なくなっています。逆に、1年の後期は退学の機会が多いということです。」
「今年はどれほど退学者を出すのか楽しみにしておきます。」
不穏な言葉を放ち、短く濃い内容の学園長の言葉は終わった。
「次に、生徒指導グループのレンポ先生お願いします。」
「これから、学園の過ごし方等について説明する。私の後ろに映し出されるものを見ながら、私の話を聞け。」
・生活費は勇者たるゆえ自分で稼ぐこと。
・学園内の寮以外の施設での寝泊まりは原則禁止。
・教師が立ち会いしていない決闘は禁止。
・授業は必ず受けること。
・その他大事なことは、生徒ステータス欄の学園規則に乗っている。
「生活していく上で必要になるお金は自分たちで稼げ。お前たちにとって難しいことではないはずだ。寝泊まりは寮以外認めん。過去に宿泊施設でやらかした生徒がいる。また、決闘なんてしようと思うな。私たち教師の中で最強の者がそれを阻止する。授業はちゃんと受けろ。あたりまえのことだ。」
レンポ先生がわざわざ話す必要がないくらい、後ろに簡潔でわかりやすく書いてある。
そんなことはさておき、なぜ、わざわざ、授業は必ず受けるなんて当たり前のことを書いてあるのだろうか。
その疑問が解決されることなく、レンポ先生の説明は終了していった。
「次に、試験制作グールプのウッコ先生お願いします。」
「これから3年間、お前たちには定期的に実力を測る試験をやってもらう。個人戦のものや、協調性を測るグールプ戦のものもあり、試験の内容もさまざまだ。この試験で悪い評価を受けると、退学になる。気をつけるんだ。」
多く語ることもないのか、試験の内容は秘密なのか、よくわからないまま、すぐに話は終わった。
その後も入学式は続いた。ただ退屈な時間が過ぎ去っていった。
魔王、勇者育成学園へ入学する 時先黒 @TokisakiKuro
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