勘助が征く!外伝・旗印は「風鈴火山」

沙羅双樹

第1話にして最終話 武田勝頼・向かうところ敵なし!

その日、武田勝頼は腹心の真田昌幸を呼んだ。勝頼の手には風鈴が一つ。ちり~んちり~んと鳴っていた。


「昌幸さあ、これ、知ってる?」

「はあ、風鈴……でございますか」

「わが武田家の旗って知ってる?」

「風林火山……でございますか」

「なんか、あれ、堅くない?」

「堅いと言われましても、戦国時代でございますから」

「そこよ。もう父上の信玄も亡くなっちゃったんだから、楽しくやろうと思ってんの、ぼく」

「新しい武田家の幕開けでございますか」

「そ~なんです、昌幸君、これからは風鈴火山にするの」

「あ、だから風鈴を持ってるんですね」

「風鈴の方が涼しくていいじゃないの」

「まあねえ」

「では、さっそく風鈴戦法で上杉謙信をやっつけに行くぞ~。エイエイオー!」



川中島。

武田軍の兵士たちは風鈴を手に手に持ち、その音を響かせながら、上杉軍へと近づいていく。騎馬隊は馬の全身に風鈴を飾りのようにつけていた。


上杉謙信の陣営では、風鈴の音が徐々に大きくなり、不安が広がっていた。

「風鈴の音…?」

謙信は首をかしげた。

「戦場に涼やかな風鈴の音色とは。しかも何百何千と近づいてくる。いい音色で気持ちが爽快になるっちゃなるんだが」



その時、武田軍は一斉に突撃を開始した。風鈴の音に引き込まれるように、上杉の兵たちは混乱し、武田軍の攻撃に対応できなかった。勝頼の策は、思わぬ形で効果を上げた。


「やった、風鈴戦法、成功だ!」

勝頼は高らかに叫んだ。

「上杉の連中も、びっくりしちゃっただろうな! 俺って頭いい! 天才! サイコ―!」


真田昌幸は呆れた様子で頭を抱えた。

「勝頼様、そんなに喜んでいる場合ではありません。まだ戦は続いていますぞ!」


しかし、勝頼の明るい声は戦場に響き渡り、武田軍はその士気を高めて突撃を続けた。



やがて上杉軍は混乱の中で壊滅的な損害を被った。

上杉謙信は怒りと驚きの表情を浮かべた。


「こんなはずじゃないのにな……。だって、俺、軍神なんだけどな。軍神は不敗なんだよね。あんなことで負けるのおかしいよなあ」

謙信は首をかしげながら、撤退の決断を下した。

「退却だ!」


上杉軍は謙信の指示に従い、混乱の中で退却を始めた。風鈴の音が響く中、武田軍は勝利の喜びに沸き返った。



甲府の夜空には、勝利の歓声が響き渡り、風鈴の音色が優しく夜風に乗って広がっていった。

(終わり)




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勘助が征く!外伝・旗印は「風鈴火山」 沙羅双樹 @kamyu_winter

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