第5話
それから2年が経った。就活を終え、無事内定も決まり、僕は地元の企業に就職することになった。家の外で必死に人間のふりをしながら、部屋に戻ると妙な安心感に包まれる。
本棚に並んだ本、弥生に渡したかったプレゼント。どちらもあの日から増えもせず、減りもしない。捨てたり売ったりすればいいと頭ではわかっているが、その気力が湧かないのだ。
グレゴールの妹が善意で片付けた家具が彼の人間性の証明だったように、僕にとってはこの群れが今の僕を稼働させるものだ。私物も、記憶も、何もない空っぽよりは何かが入っている方がいい。
本を一冊手に取る。カセットテープが描かれた表紙だ。弥生が選んだその小説の内容までは忘れたが、タイトルだけは強烈に印象に残っている。読み上げれば、馬鹿馬鹿しいほど皮肉な響きだ。
「……わたしを離さないで」
これも捨てられなくなってしまった。
弥生とは、それから一度も会っていない。唐突に別れを切り出したことを内心で恨み続けるのもエゴなら、達観して幸せを願うのもエゴだ。だから、僕はどちらも願う。無理に忘れるのは、もうやめた。
消せないものが入っているゴミ箱は、現実世界だけにある訳じゃない。今日も削除ボタンに指を伸ばし、僕は永劫の茶番を繰り返す。
そうして増えていく
Trash Box 狐 @fox_0829
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サポーター
- たっC読み専です。 作者様更新ありがとうございます。 どの作品も無事完結しますように。 キャラクターを丁寧に書いて頂いてる、と感じるお話が特に大好物です。 最近時間が取れないことがあり、お気に入りの作品も読めないのが悲しい(T_T) (特に好きな作品は時間取ってゆっくり楽しみたいので空き時間でちゃちゃっとは読みたくないです。) 僭越ながら、基本的に☆は余程の例外(読み掛け時点でも私個人の読書人生史上最高と思えるくらい)を除き、完結されている読了作品のみにつけさせて頂いています。 残念ながら最後まで読みたいと思えなくなった作品にはおそらく付けさせて頂くことはありません。 最近は続きが気になる、特に応援したい作品でコンテスト用等で☆おねだりされてる場合は、☆2つまでは読んでから早めでもつけさせて頂くこと多いです。 大体の基準は下記な感じです(主観的なものです) ☆1 個人的に思うところはあるものの、完結まで読みたくなる物語をありがとうございました。 ☆2 面白かったと思いますが、個人的にもう少し欲張りたいです。 ☆3 素晴らしい!!!最高かよ!!! また、私の文章力では批判になりかねず(作者の皆様が魂込めて書かれているのに)、結局は個人の好みの範疇だと思いますので、レビューも☆3以外は出来る限り書かないようにさせて頂いてます。 ☆3つけさせて頂いた作品は、個人的に広まって欲しい、素晴らしい物語だと感じていますので、お勧めポイント的に記載させて頂いています。 作者の皆様は作品を生み出されるのは本当に凄いと思います。皆様心から尊敬します。 ☆3付けさせて頂いてない物語は、個人的に主にサブキャラの補完をお願いしたいと思ってます。 (作者様が書きたいのは主人公周りだと思いますが、折角魅力的な他キャラ書かれてるので、出来るだけサブキャラも出来る限り最後まで書いてあげて欲しいです。)
- @hiro3gojo
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