第51話 もたらされた驚愕の情報

 意識を取り戻した男性はシュルケと名乗った。

 ゴルセン騎士団長が語った通り、彼はネルザス王国騎士団に所属している身であり、遠征中に突如出現した謎のドラゴンと交戦状態になったという。


「ドラゴン討伐のノウハウはしっかり叩き込まれていたのですが、ヤツにはそのすべてがまるで通じなかった」


 ネルザス王国は大陸内でも五指に数えられる大国で、エルダインと不戦条約を結んだ国のひとつであった。


 そこの騎士団に所属しているとなったら相当な場数を踏んでいるはずだし、何よりそうした経験から得られた知識も豊富であり、軍事力という点だけ見たらエルダインと遜色ないと言える。


 そんなネルザスでさえ手も足も出なかったという謎のドラゴン。

 やはりそいつが災竜なのだろうか。


 俺は彼にまず魔法を使えるモンスターや異常な自然現象などが起きていなかったかどうか尋ねてみた。


 すると、シュルケは「なぜそれを!?」と言わんばかりに目を見開いて驚いていた。


「俺たちも同じような状況になっていたんだ」

「そ、そうだったのですね。――って、『俺たち』というのはルクレンド以外にもそうした国があるって意味ですか?」

「ああ。周りにいるのはルクレンドの騎士だが、俺はアルテノアから来たんだ」

「ア、アルテノア……?」


 この様子だと、シュルケはアルテノアという国自体を認識してはいないようだ。

 無理もない。

 めちゃくちゃ小さい国だし、俺も最近まで知らなかったし。


 ――っと、話が少しそれてしまった。


 ともかくより詳しい状況を知るため、シュルケに続きを語ってもらうことに。


「私の所属していた部隊は魔法を使うモンスターが出現したという一報に対応するため派遣された第一陣でした」

「実際に魔法を使うモンスターと交戦したのか?」

「えぇ。炎魔法を使うオークの群れと遭遇しましたが、すべて倒しました。……ですが、その直後にヤツが姿を現し、状況が一変したのです」


 青ざめた表情で語るシュルケ。

 そこで災竜と遭遇したのか。


「ドラゴンという話だったが、外見に何か特徴はなかったか?」

「全身が紫色をした鱗で覆われていました。何より驚異的だったのは、こちらの攻撃をまったく受けつけなかったことです」

「つまりダメージを与えられなかったと?」


 俺の問いかけに対し、シュルケは静かに頷いた。

 あまり思い出したくないのだろうな。

 反撃の手段がことごとく弾かれたとあっては当然の反応と言える。


「攻撃を跳ね返すとは……かなり戦いづらい相手のようですな」

「確かに。現状では成す術がありません」


 周囲に流れる重苦しい空気。

 シュルケが遭遇したというドラゴンが災竜として間違いなさそうだが……どうやって倒したらいいのか。


 その方法に関しては皆目見当もつかなかった。

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2025年1月11日 12:00 毎日 12:00

辺境勤めの魔剣教官 ~不正への加担を拒否したら大国を追い出されたので小国に移り住んだけど、将来有望な若者たちが多すぎる~ 鈴木竜一 @ddd777

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