第30話

 カイトさんアリシアさんリンさんと僕達4人で森に行くことになった。


「よし、ここら辺ならいいだろう」

「そういえばいつも転移で移動してたからここがどこなのかわからないです」

「フレアソードの町はあっちだ」


 そう言って指を指されたけど、目を凝らしても探知をしても何もわからなかった。どこを見ても樹しか見えないし…。


「まぁ、町から出たら西の方に飛べばそのうちフェンリル様の魔力捉えるだろ」

「なるほど、わかりました」

「飛んで来たら獣人の村が見えるかもだけど、あそこには寄らないように」

「獣人が居るんですか!?ケモミミですか?」

「オオカミだからケモミミとフサフサの尻尾があるぞ」


 すごく見てみたいけど、どうやらあまり人間に慣れさせると町に出ると言い出すものが出てきて良くないのだとか。確かにこの世界だと貴族が出てきて召し抱えるとか言われたらもう終わりだもんね。逃げ切れたとしてももうそこには居られなくなってしまう…。それなら人間と関わらないほうが安全か。


「こっちに気づいたな」


 フェンリル母さんのことかな?と思ったらもう目の前に居た。


『どうしたのだ、こんな大人数で』

「ちょっと顔合わせをね」

「フェンリルちゃんのオオカミ姿初めて見たかも」

「アリシアさん?フェンリルちゃんって…」

「瑠奈ちゃんも気を付けてね?強い男見ると子種を狙ってくる悪いオオカミだからね」

「「え…」」

『太陽はまだまだだから大丈夫だ』


 フェンリル母さんに襲われたら防げる気がしないよ。


「こっちが太陽と瑠奈の幼い頃からの友達で翔太と綾香」

『我がこの森を守るフェンリルだ』

「よ、よろしくおねがいします」


 翔太腰が引けてるぞ。


「この森は重要な場所で、ここにもし何かあったらお前達4人も協力してあげて欲しいんだ。それと、口の軽いやつにはここのこと言うなよ」

「他には話さないようにしますけど、協力とは?」

「暇あればここに来てフェンリル様に鍛えてもらうんだ」


 そうやって通ってるうちに、異変があったら対処できれば対処して、できなければカイトさんに伝えるなりしてほしいそうだ。なるほどね。


「俺達が不在の時に備えてくれってことだ」

「なるほど。わかりました」

「そんなわけでリンがうずうずしてるから模擬戦してもらいなさい」

「ありがとうございます」


 そう言っていきなり始まったんだけど、動きが早すぎて見えないや…。


「剣士の俺が早すぎて目で追えないのか…」

「大丈夫だよ翔太、私もついていけないから」

「翔太頑張れ!」

「が、がんばるよ」


 僕達あの領域までいかないといけないの?


「太陽はぼーっとしてないで魔力を感知するんだぞ」


 そうだった!でも、目で見えないものを感知しても…あれ?魔力の残滓みたいなのを追いかけられる?


「気づいたようだな。この世界の生き物は動く時に魔力を使うからそれを感知すればいい」

「もう少しで捉えられそうです!」

「よし、頑張れ!…他はまず全身を身体強化して見学だ」


 身体強化と聞いてそちらを見てみれば、翔太はできてるけどまだぎこちないね。綾香はできないので瑠奈に手取り足取りで教えてもらってるのかな?なんかダンスしてるように見えるんだけど…。アリシアさんはそれを見てニコニコしている。いつの間にイスとテーブル出してくつろいでるの?


「すぐにあの領域までいけとは言わないが、感知だけでもできるようになっておかないとこの世界は危険だぞ」

「そうなんですね、頑張ります」


 少しだけコツがつかめて来たような気がする。あっちでも翔太が「だんだん見えるようになってきた」とか言ってるし、慣れてくるもんなんだね。


「そろそろリンが限界なようだ」


 飛ばされてきたリンさんをカイトさんが魔法で受け止めた。


「カイト様ありがとうございます」

「いいんだよ。よく頑張ったね」

「はい、でもあの銀毛はずるいです」

「あれも魔力纏って攻撃を受け流すようだね」

『次はカイトか?』

「いや、今日はここまでにしておくよ」

『そうか』

「彼らが来たら面倒見てあげて欲しいっていう顔見せだったからね」

『まぁ、暇つぶしにはなるか』

「じゃあそろそろ帰るぞー」


 あれ、もう帰るの?


「フェンリル母さんまた来ますね」

『うむ…。いつでも来い』


「じゃあアリシアは飛ばせるとお腹の子にどんな影響があるかわからないので俺とアリシアは転移で帰るけど、太陽達は飛んで帰ってきたらいいよ」

「そうすると大体の方向がつかめますね」

「うん。翔太と綾香に飛ぶコツも掴ませられるしね」

「わかりました」


 カイトさん達が転移で消えた後、まだ唸りながら剣を振っている翔太の手を掴んで飛び上がった。綾香は瑠奈が連れているよ。


「おおう、飛んでるぞ…」

「飛び方覚えてね」

「難しいな…」

「そう?綾香はもう手を放しても良さそうだけど」

「ちょっと手を離してみて」

「綾ちゃん大丈夫?」


 瑠奈がそーっと手を離してみたら、やっぱり真っすぐ飛ぶことだけはできていたね。


「なんで皆飛べるんだ…」

「逃げるのにも便利だから頑張って覚えようね」


 そうこうしてるうちに町に着いたんだけど、綾香はまだ止まれないようなので瑠奈がしっかり捕まえていたよ。


「とりあえず魔力をうまく扱えないとこの世界じゃ何もできないことがわかったよ。帝国の騎士を見てたら強くなったと思ったんだけどなぁ」


 そんなことを言いながら、夕食の準備があるからと二人は宿舎に帰っていった。女子2人はまだいるかなと思って事務所に来てみたら。


「思いっきりくつろいでるね」

「あ、社長お帰り!エアコンつけたら快適空間すぎてここで寝泊りしたいくらい」

「それはまずいよ。どんだけブラックなんだってクラスメイトに僕が怒られちゃうよ」

「それはあるかも」

「とりあえず夕飯の時間までには宿舎に戻るようにしてね」

「「はーい」」


 僕も夕飯の時間までは今後の予約状況などを確認しておきますかね。

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クラス転移したけど最下級職で追放されました 黒井あたる @black_hit

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