最終話

「……矮小なる存在が!」

「っ!そこ!」

「ぐぅ!?」

 勇者レオンの溜め時間を潰そうとする魔王。

 だがそこを俺が魔法銃撃をお見舞いし、行動を潰す。

「貴様が!貴様さえいなければ!!」

「アルベルトに傷は負わせない!」

 そう叫び、激昂した魔王の放つ電魔法の攻撃を

 アリシアも雷魔法で応戦し俺を守りガードする。

「くっ!」

「おっと逃げるなんてさせないぜ魔王?」

 素早い身のこなしで影縫いをし、魔王の身動きを封じる隠者。

 ついでの土産と言わんばかりに毒針を身体に突き刺して。

「こうなれば地面を砕いて……!」

「今のお前に私の防御を突破できると思うな」

 地面を砕く攻撃をして無理やり影縫いの解除するのを狙うも

 強化も弱体化も施せてない魔王の一撃等、恐るに足りぬと

 パラディンは持ち前の防御力と加護を使って容易く受け止め切り

 影縫いの強引な解除を阻止する。


「皆のもの!離れろ!巻き込むぞ!」

 そう言い、聖剣に迸る凄まじいオーラが出ており

 溜めが完了したと言わんがばかりの勇者レオンが

 その一撃を魔王にぶつけようとしている。

「せめて貴様ら諸共滅ぼしてくれるわ!!」

「アリシア、魔力、貸してくれ」

「アルベルト……受け取って!」

 自身の持つ魔力が切れた為にアリシアから渡された魔力を使い

 最後の魔法銃撃で魔王の頭を狙う

「っうぐあ!?」

 魔王は頭を銃撃され

 他者の魔力を受けた事でコントロールが乱れ魔力が雲散する。

 そこにできた隙を勇者レオンは叩きこんだ。

「これで終わりだ魔王!!」

「わ、矮小なる存在に、わ、我が……」

 その絶大な一撃はボロボロになった魔王を滅ぼした。


「あの日、お前を追放しないで良かった」

 魔王討伐記念のパレードの途中、勇者にそう言われた。

 今思うと俺は勇者様に認められたかったのかもしれない。

「俺は……信じてくれたのが嬉しかった」

「それを可能にさせたのはアリシアだろう?彼女に感謝するんだな」

「アルベルトー!貴方の子を産むために落ち着ける日々が来たわー!」

 周りにたくさん人がいる中

 アリシアは恥ずかしげも無く宣言するように大声で言った。

「こんな公衆で宣言するとは……彼女を幸せにしろよ?」

「勿論です勇者様」

「その、勇者様をやめろ、レオンで良い」

「……レオン、ありがとう」

「あぁ」

 結局、魔法銃撃もそこまでの物だった。だが違いは確実にでた。

 それは走って切るより、その場で撃って止めるが出来たからだ。

 お陰でパーティは致命的な攻撃を受けず

 強化される事も弱体化をくらう事も無かった。

 パラディンは俺にヘイト行くから

 俺を守れば良いと立ち回りやすくて楽だったと語った。

 隠者は面白いくらいおちょくれていざ攻撃、としたらお前が止めるもん。

 怒り心頭な姿を間近で見れたし

 魔法封じや毒漬けにできたりと楽しかったと語った。

 勇者レオンは溜めにかかる時間を稼いでくれるのがとても有り難かったと語った。

 王様がレオンを婿として迎え王女と結婚させ

 王族に勇者レオンの血を加えさせようとしたらしい。


 だがレオンは元の身分が違うので男爵から成り上がるとの事。

 周りを納得させるためには

 1から貴族の世界を学ぶ必要があると高らかに宣言して。

 王様は功績を考えれば問題ないと言うのに、律義な奴と語っていた。

 王女自身はそんな清廉潔白な勇者レオンにベタ惚れらしい。

 周りの侯爵とかは概ね好意的だ。

 きちんと貴族としてのふるまいや付き合いを学ぼうとする

 その姿勢が気に入っただとか。


 そしてアリシアとは俺は無事結婚

 三人の子どもと健やかに生きた。


 勝手に決めつけず、話し合いをしたからパーティと仲違いせず

 最後まで円満な関係でいられた。歩み寄ろうとしなければ離れるだけ。

 俺はあの日、勇者レオンを、アリシアを信じなかったら、追放されていた。

 あったかもしれない最悪の想定を反面教師として糧にし

 俺は今日もアリシアと話し合う。

 勝手に決め付けず、思う事を口にして。

「アリシア、今日は何をしようか」

「……久しぶりに二人でゆっくりしましょう?」

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勇者パーティで最弱の俺が勇者から追放されなかった理由 のんびりした緑 @okirakuyomu

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