第3話

「魔法戦士兼ガンナー?」

「はい、ただ試したい事でもありますね」

「アリシアは俺に何を試したいんだ?」

 アリシアは何か確信を持って魔法戦士兼ガンナーにさせようとしている。

 だが剣士一辺倒な俺にはガンナーが出来るか不安だった。

「私が思ったのは

 一瞬を争う中で攻撃を潰そうと思ったら走ってただ斬り付けるしかありません」

 これだと勢いはあっても力の籠もった一撃じゃないから

 攻撃予告線を潰せても弾かれてしまう。これが剣士が向いてない理由だと

「もし、ガンナーによる魔法銃撃でもその攻撃予告線を潰せるのなら

 速攻性のある魔法銃撃の方が圧倒的に早く強いです」

 確かにその場から動かずに攻撃できるのなら、そっちの方が早く強い。

 例えダメージが無くても、どっちも一緒なら魔法銃撃の方が良い


「普段は剣士で攻撃を行い、攻撃予告線がでたらガンナーの魔法銃撃で潰す」

 視野が広いが故に余計に見えてしまい

 予告線を潰そうと動き回るから散漫になる。

 なら動かなくても遠距離から攻撃できるようにしてしまえば良い。

 その為のガンナーによる魔法銃撃。

 剣で攻撃して防がないと駄目と固定観念に縛られてた俺は、解放された気がした。

 他でもない幼馴染で婚約者のアリシアがそう言ってくれたのが

 自身の強みになるかもしれないと思えた。やってみる価値がある。

「やってみませんか?」

「アリシア……あぁ、俺、やってみるよ!」

「良かった……やっと笑顔が戻った……」

 安堵するようにアリシアは上ずった声でそう呟いたのを聞いてしまった


「え、笑顔?」

「……そうです!ずっと何か思い詰めるような状態で

 笑顔が無くて私不安だったんですよ!?」

 しかも婚約者の私に何も言ってくれないし、勇者様にも相談しないし!と

 今までの不満を爆発させるように怒り心頭になるアリシア

「す、すまない。」

「私に負い目があるような立ち回りするし、嫌われたのかと思いましたよ!?」

「てっきり、勇者様に気持ちが傾いてると考えてしまってな……」

「……今聞き捨てならない事を言ってくれましたわね」

 アリシアが無機質な声質でそう呟いた後、怒気を含んでコチラに向かってきた。

「誰が!誰の!女なのか!今ここで!証明します!」

 そう言ってアリシアはローブを初めに脱いでいき

 その後もどんどん身に纏う衣類を脱いでいった。

 最終的には一糸まとわぬ姿となり俺を押し倒してきた

「ま、待てアリシア!早まるな!」

「いいえ我慢の限界です!分からず屋には行動で示すのが一番です!」

「ちょ、ま、アーッ!」

 その日、俺はアリシアに大人の階段を登らされた。

 アリシアから血が出てたとは言っておこう。


「ごめんなさい……はしたないにも程がありましたわ」

「いや、俺がなよなよし過ぎた……」

「そう思うのでしたら、次から相談してください。不安になります」

「そうする」

 体液やら血やらで汚れに汚れたシーツをどうしようか思いながら

 アリシアの体をタオルで拭いて服を着込む。

 宿屋のおっちゃんからは良い悲鳴だったぜ?って茶化されて

 二人して顔を赤くする事案もあったが

 準備を整えた俺達二人は勇者様の元へ向かった。


「……いい顔になった、解決したか?」

 出会って早々に勇者様にそう言われた

「はい、魔法戦士兼ガンナーに転職しようかと」

「また変わったものになるんだな」

 って口走った、バカにしてる訳じゃ無いと狼狽える勇者様。

 良い人だけど、スッキリした今聞いてみると

 血の気の多い冒険者とか相手だと喧嘩を引き起こしやすい欠点が見られるな。

 卑屈になってて気が付かなかったのかも。

「上手くできるか分かりません。

 でもアリシアが、婚約者が言うのならやってみたいんです」

「アルベルト……」

「分かった、昨日言った追放の件だが、無かったことにする」

「?良いんですか?」

「誰にも相談しないで勝手に抱え込もうとするのは

 パーティや婚約者を信じていないという、一種の裏切りだからだ」

 というよりパーティの弱点になり得るから

 それを解消してくれないのなら追放しかなくなると言われた。

 昨日言った腕っぷし以外に必要な物とはこれの事だったか


「アルベルト、あれの事、言おう?私が信用してるから」

「アリシア……分かった、勇者様、聞いて欲しい」

「何だ?言ってみろ」

「俺は攻撃予告線が見えるんです」

「攻撃……予告線?」

 何だそれと言った様子の勇者様。そりゃそうだ。

 今まで言ってなかったから。言っても信用されないと勝手に決めつけてたから。

「攻撃や自己強化、対象を強化弱体化等を行う時

 それが線となって現れて見えるのです」

「……ふむ、それで?」

「それを実行される前に攻撃すると阻止できます」

「そんなバカな……

 いや、情報で聞いたより弱かったり攻撃頻度が少ない時があった。

 必殺の一撃を放つ時も必ず溜め時間があった……」

 今までの出来事を思い返すようにぶつぶつと呟く勇者様。

 数分考え事をして決まったと呟き、コチラを見た。

「アルベルト。魔法戦士兼ガンナー、期待してるぞ」

 真っ直ぐコチラを見て勇者様が俺に期待してくれた。

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