倉庫と姫と

第95話

あの、通称”嫌がらせ事件”から、1週間程経った頃。





私は何故か、





「琶來!楽しみだね!」



「…楽しみ。」





両隣をいつもの奴等に陣取られながら、もう一度言う、何故か、傍から見たら怪しさ満載の黒塗りの車に乗っていた。正確には、乗せられていた。





…どうしてこうなった?





こうなったのには、訳もくそもない。まともな説明も受けずに、気が付いた時にはこうなっていた。





どうして、こうなった?と、さっきから頭の中にはこの言葉しか浮かんでこない。









――遡ること15分前。







いつものように登校して、いつものように昼休みを迎え、いつものように空き教室で仮眠を取っていた。





今日はあいつらの姿を見かけないな、とは微塵も思わなかった。”あいつら”という単語も思い浮かばず、何か今日は静かだな、と思った程度だ。





そこまではよかった。問題は、そこからだ。





人が珍しく気持ちよく起きた瞬間、目の前には何故か”奴等”がいた。





寝起きで覚醒してない頭でも、「何でこの場所にお前らがいる?」という疑問だけは真っ先に浮かんだ。





誰が教えた?まさか真梨か?透さんか?返答によっちゃ潰すか?消すか?…というところまで殺意が沸いてしまった。




そんなことを考えている間に、寝起きで色々感覚が鈍っているのをいいことに、あれよあれよと連行され、意識がはっきりした時にはもう既にこの状態だった。




冷静になった時に思ったことは、こいつらイカれてんな、である。




はぁ…、と深い溜息を吐き出しながら、不意に視線を感じて顔を上げれば、バックミラー越しに運転している人と目が合った。スキンヘッドにサングラスという、あからさまな見た目をした人だ。




その人は私と目が合うと、少しサングラスをズラして、何とも申し訳なさそうに眉を下げて頭を下げてきた。…見た目では判断しないが、見た目に反して常識人らしい。多分いい人。





そんなやり取りを見ていたのだろう、急にキャラメルが声を上げた。





「あー!ナツが琶來に色目使ってるー!」




「なっ、やめてくださいよ変なこと言うの!それ、絶対に羅依さんに言うのやめてくだいね!?殺されるんで!」




訳が分からないことを喚いているキャラメルに、何故か焦りながら返しているナツと呼ばれた人は、それからしばらくずっとくだらない言い合いを続けていた。




そして、なかなか止まらない言い合い合戦に痺れを切らして一言文句を言ってやろうと思った矢先、ようやく車が停まった。





「お、着いたね!降りて琶來!」





そうキャラメルに促されて仕方なく降りた先で見たものは。















まさかの、馬鹿でかい”倉庫”だった。

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病弱少女と暴走族 haku @nameko25

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