第17話
今ここでツキが出てきちゃったら色々とまずいからね。いつものツキの姿じゃないから余計に。と、まだ納得しきれてなさそうなツキにそう言えば、
――…分かった。でも、まじで危なくなったら問答無用で出ていくからな?
どことなく拗ねたような声で念を押してくるツキに内心苦笑を漏らしながら、改めて目の前の男の人を見上げれば、その人も私をずっと見下ろしていたみたいで目が合った。
すると、一瞬だけど小さく目を見開いたような気がした。気がしただけだから、本当はそうじゃないかもしれないけれど。
そして何故か、じーっと無言で見下ろされ続けている。
――何だこいつ?さっさとぶっ飛ばして逃げるか?
そんな私の状況を心配したツキが物騒なことを囁いてくる。絶対だめ!もっと面倒なことになっちゃうでしょ!と言えば、軽く舌打ちが返ってきたけど大人しくなった。
さて…と。とりあえず、私を呼び止めた理由を思い切って聞いてみようか。そう思って、「あの…、」と声を掛けようとしたら。
「…その目、」
唐突に、そんな呟きが聞こえてきた。
目?と一瞬疑問に思ったけど、すぐに理由に思い当たった。…私の目の色は、”異質”だもんね。
『あー…、私の目の色のことですよね?変わってますよねこの色、生まれつきなんですけどね。』
初対面の人相手に何言ってんだろう、って思ったけど、最初にこの人が指摘してきたことだから、別に変ではないよね?と開き直る。
さて、この人は何て言うかな。気持ち悪い?変わってる?不気味?慣れてるから、別に何て言われても…、と、思ってた時だった。
「…いや、綺麗だなって、思っただけだ。」
不意打ちで、そんな言葉が耳に入ってきた。
『え…、綺麗?ですか?この色が?』
そんなことを言われると思ってなかったから、びっくりし過ぎて少し固まってしまった。
「…あぁ。綺麗だ。」
今度ははっきりそう言われて、思わず「ははっ、」って声を出して笑ってしまった。
『ふっ、すみません。…ありがとうございます。』
お礼を言うようなことじゃないかもしれないけど、自然と口から零れていた。
綺麗、なんて。そんなことを言われたのは、”2回目”だったから。
―――「綺麗だな。」
そういえば、その”1回目”は誰に言われたんだっけ…?
顔も、声も、覚えていない。でも、誰かにそう言われたことだけははっきりと覚えている。
その記憶を何とか辿ろうとしたけど、どうしてか、思い出せなかった。
そして私は、自分を隠す。 haku @nameko25
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