第12話

そう言ってくれるけど、アタシにとっては迷惑な話なんだよ。


「アイツ等は顔だけ好みだから、ほかっとけばえぇんだよ。アタシが告られたいのは、広樹だけなんだよ。でも、ムリだと分かっとるからツレで満足なんだよ」


広樹のことを好きだと知っとるのは、綾子だけにしか言っとらんかった。


「もし、広樹が告ってきたら付き合うの?」


まず、そんな嬉しいことはねぇのに、綾子はアタシの顔を見て聞いた。


「その時は、もちろん付き合うよ。すぐにアキラくんはポイだよ」


本音を聞いた綾子は、嬉しそうにニコニコ笑って見とった。


「ふ~ん。アキラくんと別れて広樹と付き合うんだ」


「当たり前じゃん。でも、そんなことねぇからツレで満足なの。そんな夢みたいな話をして、ぬか喜びじゃん」


「綾、飛鳥が来とるんか? ケーキを買ってきたけど、食うか?」


部屋の外で男の人の声が聞こえた。

立ち上がって、綾子はドアを開けた。


「うん、明日、カラオケに一緒に行くから、今日は泊まりに来たの。マサ兄、どんなケーキを買ってきてくれたの?」


甘いのが大好きな綾子は、嬉しそうな顔をして聞いた。


「冷蔵庫に入っとる。飛鳥、久し振りだな。あっ、ムッちゃんのツメを切ってくれねぇか?」


答えを聞いた綾子は、すぐに部屋を出て行った。

たぶんケーキを見に行ったんだと思う。


「うん、どこにムッちゃんが居るの? さっき、見に行こうと思ったけど、マサ兄もカズ兄も居らんかったから、行かんかった」


小さい頃からマサ兄とカズ兄には世話になっとる。

ムッちゃんもアタシのわがままで飼ってくれとるんだよ。


「まだ、カズが帰って来てねぇから、俺の部屋に連れて来た。後で俺の部屋に来てくれ。最近、飛鳥と綾はケガして帰って来てねぇが、かなりケンカをしとるみたいだな。悪魔と悪女コンビだと噂も流れとる」


現役を引退しとるマサ兄が、そんな情報が耳に入るくらいだから、かなり有名になっとるんだ。


「マサ兄……アタシと綾子は……」


「飛鳥と綾はツレが被害に遭っとるのを見て見ぬフリ出来ねぇから、ソイツ等を助ける為だと分かっとる。だが、レディースを相手にケンカしとるから、俺もカズも心配なだけだ」


レディースには口止めしとるのに、どっから漏れとるんだ? 

強化したところで、マサ兄とカズ兄はアタシと綾子が悪魔と悪女だと知っとるから同じなんだよな。


「ツレや友だちが大切だから、アタシが守れることをしとるだけ、ちっぽけなことしか出来んけど、それで何もなければえぇの。綾子はそれに付き合ってくれとる。でも、綾子のことはアタシが絶対に守る」

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