第10話

可愛い包装紙に包まれて、赤いリボンと青いリボンで結ばれとった。


「2つ入っとるよ」


不思議そうか顔をして聞くと、アキラくんは照れ臭そうに笑った。


「あっ、それは俺のだよ。付き合って初めてのクリスマスたがら、記念のペアリング」


顔を赤くして言ったアキラくんは、紙袋から青いリボンの箱を出して指輪を出すと、自分の左の薬指にはめた。


そんなこと言われても困るんだけど……


「飛鳥ちゃん、そんな深く考えねぇで良いよ。飛鳥ちゃんに好きな人が居るのも知ってる。けど、その人より俺を好きになる可能性もある。それまでこの指輪は、ただの記念品で良いよ。でも、俺と居るときは嵌めて欲しいな。俺の彼氏と言う立場があるからね」


そう言ったアキラくんは、アタシの顔を見て笑った。


そう言われて素直に指輪を受け取ることにした。

箱から指輪を出して、アキラくんと同じ指にはめた。


さっきは指輪を受け取る気ねぇから、ちゃんと見とらんかったけど、本物のプラチナと金のコンビの指輪だった。

見た目は玩具みたいだけど、中学生のアタシには高価な物だ。

高校生のアキラくんにしても高価な物だと思うけど、アタシに気ぃ遣って記念品だと言ったと思う。


アキラくんとの記念のペアリングだ。

肩書きだけの彼氏だったけど、初めての彼氏からプレゼントを貰うと結構嬉しいんだ。

学校では男子から、手紙やプレゼントを貰ったけど、別に深く関わってねぇから嬉しくなかった。

それが広樹だったら、めちゃんこ嬉しいと思う。


貰った指輪を眺めとったら、いつの間にか時間が経っとった。


「飛鳥ちゃん、遅くなっちゃったね。送って行くよ」


ベンチから立ち上がって、アキラくんは嬉しそうに指輪を見て笑って、アタシの手を握り歩き出した。


いつもアキラくんは、アタシと歩いとる時に話をしてくれた。

アキラくんの話に返事をして聞いとるだけだったけど、1人で嬉しそうに笑って話しとった。


駅から家の近くまで送ってくれた。

家の近くに来ると立ち止まってアタシを見た。


「飛鳥ちゃん、今度は正月明けに動物園に行こう。年末はイベントで走りに行くから、なかなか会えねぇけど、メールは毎日する。飛鳥ちゃんも友達とカラオケに行ったりするんだよね」


笑ってアキラくんは、アタシの頭を軽く撫でて帰って行った。


帰ってから綾子に電話した。

今年はもうアキラくんとは会わんことを報告した。


カラオケに行く前日から、綾子の家族と一緒に夕飯を食べた。

そのまま、綾子の家に泊まることになった。


大人はリビングで話をしとったから、アタシと綾子は部屋で話しとった。

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