ED2

「千賀子とのことは関係ないだろ、佐和には」俺はちょっと腹が立っていた。「なんで千賀子との仲を詮索せんさくするんだ? 大体、ただの友達と言っているじゃないか」

「ごめん……なさい」

 佐和の手から銀紙に包まれたおにぎりがこぼれ落ちた。きれいな三角形に握られたおにぎりが屋上の床を転がった。

 立ち上がると、佐和は階段室の方へと走っていった。

「ごめんなさい!」

 佐和は声を張り上げた。

 振り向いたその目には涙がたまっていた。


 ――言い過ぎた、ごめん。

 その言葉が口をついて出る前に、佐和は姿を消した。

 午後の授業に、あいつの姿はなかった。


 ちょっと言い方がきつかったみたいだ。

 後で謝るとしよう……。


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 目をあけると、やわらかな朝の日差しに照らされた渡辺佐和さんの姿がとびこんできた。

「おはよう。初めての朝だね」

 僕が起きたのに気がつくと、佐和さんの顔じゅうにほほ笑みが広がった。

「あ……あの」

 なんと言ったらいいか分からなかった。まともに佐和さんの顔を見ることもできなかった。


「どうしたの、池山くん?」

 佐和さんが小首を傾げた。

 信じられないことに僕たちは生まれたままの姿でこうしてベッドに横になっている。

 昨日の昼休みの終わり直前、スマホに佐和さんから通話があった。朝、通学路でした告白の返事かと思って慌てて出ると、佐和さんは涙ながらに「会いたい」と言った。

 学校の外で落ち合うなり、佐和さんは僕の背中に腕を回してきた。

「抱いて……!」

 涙声で彼女はいった。あれよあれよとホテルに入り、ご覧の有様というわけなのである。


 佐和さんはこういうことに慣れているみたいだった。

 彼女の手ほどきによって、僕は童貞を捨てた。その後は時間を忘れるぐらい行為に没頭していた。

 つきあうなら処女しか絶対ありえないと思っていた僕だけど、その信条はこの部屋のゴミ箱に放り捨てた。


「あのさ、渡辺さん。僕たちって恋人同士ってことで……いいのかな?」

 その辺の話をしていなかった。なにせ会ってから秒を置かずにホテルになだれ込み、それからずっとことに及んでいたのだから。

「ああ、それかあ。うーんと」

 人差し指を唇に当て、佐和さんが小首をかしげると、つやめいた黒髪が首筋にかかって色っぽかった。

「『代打』ってことでいい?」

 その顔にほほえみの花が咲いた。


『代打』ってなんだよっていうツッコミが胸のうちに生まれたが、突然の彼女の口づけによってその言葉は押さえこまれた。

「それより、チェックアウトまでまだ時間あるから……ね?」

 照れくさそうにそういうものだから、僕はたまらなく発奮し、彼女をベッドに押し倒した。

「きゃっ」

 彼女が嬌声きょうせいをあげた。

 この際、『代打』がなにか考える必要はない。彼女とこうして一緒にいられるのならば。



BAD END2


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https://kakuyomu.jp/works/16818093087082605981/episodes/16818093087082629584

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