寝る
「起こしに来てもらって悪いけどさ、昨夜二時まで起きてたから死ぬほど眠いんだよ」
俺は布団を口元まで引き上げた。
「いくらなんでも夜ふかしがすぎるよ、京ちゃん」
佐和は眉をひそめた。
「まあ、そういうわけだから、眠らせてくれ」
俺は布団の奥へともぐりこんだ。
「じゃあ、私先に行っちゃうからね!」
「おう。じゃ、おやすみ」
片方の手をひらひらと振った。
パタリと扉を閉める音が聞こえた。
目が覚めたら時刻は十時を回っていた。
「もうこんな時間か。そろそろ登校すっかな」
校則が自由な学院を選んでよかった。登校時間は各自にゆだねられているから、こうして遅くまで寝ていても、怒られるということがない。
……その分、俺自身の勉強は遅れるわけだが。
登校路を歩いていると、前を歩くミニスカ姿の女の子が目に入った。肩まで伸びた金色のロングヘア。小麦色の肌。よく知った人物だ。
「よう、千賀子。今日も遅い登校だな!」
「京じゃん。オハヨ! そっちこそ遅刻でしょー?」
千賀子は、ネイルアートが彩るその手で口元をおおい、けたけたと笑った。
「まあな。昨夜はずっとカクヨムを読んでたんだ。ほんとうに優良サイトだな。そういう千賀子は何してたんだ?」
「あたしは本読んだり、ネットサーフィンしてた。いやー、現代世界文学におけるマジック・リアリズム描写の源流は、ガブリエル・ガルシア=マルケスにもとめられるんじゃないかなと思って調べ出したら止まらなくて~」
「あいかわらず、お前の話はわけがわからないな」
見た目はギャルな千賀子だが、中身は本好きのいたって普通の女の子。友達は多く、気のいいやつだ。俺が読書をするようになったのも、千賀子の影響が大きい。
「あ、次の授業、現代文じゃん!」千賀子がカッと目を見開いた。「早く行こう。聴き逃がせないよっ!」
千賀子が俺の手を引っ張った。
「あ、おい、待ってくれよ」
こうして俺たちはどたばたと校舎に向かって走っていったのだった。
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https://kakuyomu.jp/works/16818093087082605981/episodes/16818093087082749128
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