第44話 オメガだって溺愛する羽目になるんだよっ!
「ルノ、しつこい」
「いいじゃないか。新婚なんだ」
「新婚っていつまで……」
「いつまででもいいぞ。死ぬまで新婚って、言い張るのもいいのではないか?」
「いや、ルノ。それじゃ、ただのバカだ」
「バカにもなる。私のパートナーは魅力的過ぎるから」
「ハハッ。なんだよそれ」
奥さま部屋、正確にはオレ部屋でルノがじゃれついてくる。
レースとフリルが最低限だけ使われたシンプルな部屋は、白と、青と、茶色で出来ている。
白は青の影響を受けて、純白というより銀に近い色に見える。
家具の茶色は総じて淡く、明るい。
甘さ控えめのスッキリした部屋は、オレとルノの色。
「確か、この部屋はオレの部屋だったはずなんだかなぁ~」
「いいじゃないか。パートナーなんだから」
あれから変わった事と言えば、オレが使う作業用の机が運び入れられたこと。
部屋は少し狭くなったが、仕事は少し進めやすくなった。
仕事に必要な物は殆ど実家にあるけれど、自宅で出来ることも沢山ある。
「ルノは自分の仕事をしなくていいの?」
「ここでしてる」
ルノの仕事机も運び込まれた。
小さな事務机だ。
ルノがここで出来る仕事も沢山ある。
「何も奥さま部屋でしなくても」
「ここがいい」
「居心地がいいから?」
「いや、ミカエルがいるからさ」
「またまたぁ~」
窓から入って来るのは、午後の日差し。
心地よい、秋の日の午後。
「少しでも長く一緒にいて、点数稼がなきゃ」
「ふふ。なんだよ、それ」
ルノはオレを愛していると思う。
溺愛だ。
オレは一瞬、その愛に溺れて息が止まりそうになったけど。
オメガだからって甘く見てたのは、オレも同じなんだと思う。
オメガだって、そうじゃない人達と同じように恋もすれば、愛も求める。
溺愛する羽目には、なりたくないけど……。
……いや。
もう手遅れなのか?
「いや、私は本気だぞ?」
ルノがオレの首に腕を巻き付けて、体重をかけてくる。
「重たい」
オレは笑いながら、椅子を半分、ルノに明け渡す。
「キミが自分から噛んでって、言いたくなるようにしたい」
オレのチョーカーに、ルノがガシガシと歯を立てる。
「ふふ。まだ全然ダメだな」
「そりゃ残念」
ルノは笑いながら頬に音を立ててキスを落とすと、自分の事務机に戻っていった。
同じ場所で別々の作業をしていても、気まずくならない距離感が心地よい。
いつかオレが項を噛ませるとしたら。
それは、 ルノ。
お前だよ。
オメガだからって甘く見てるから溺愛する羽目になるんだよっ! 天田れおぽん@初書籍発売中 @leoponpon
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