後に葛籠の中に二つの骸を見つけた者は語る。


お気に入りの童子が戻らない事を心配した主人が、使用人らと共に座敷牢へと足を運ぶと、二人は葛籠の中ひっそりと息絶えていた。


「あぁ、なんて事だ……だから近付くなとあれほど言ったのに……」


病で苦しむ男は精神に異常をきたしていたらしく、主人は余り此処へは近付くなと童子に警告していたらしい。


童子の無惨な状態に主人らは大層悲しみ、二人をそれぞれに埋葬しようとした。


童子を抱き締めた男の骸を引き剥がそうとしたのだが、男の腕が童子の身体にしがみつき中々に外せず、何とか数人で引き剥がして二人の遺体を別々の部屋に安置していた処、男の骸は夜な夜な歩き回り、朝方には童子の骸にぴったりと寄り添っていたという。


気味が悪くなった主人らは、二人の骸を葛籠に戻し、そのまま土葬した。


蓋が閉じられる前に見た男の顔は、今まで見たことの無いほど、穏やかなものであったという。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

葛籠入り 冬生まれ @snowbirthday

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画