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死者に白い死装束を着せる様に花嫁が白無垢を着るのは、生まれた家の子としては死に、嫁ぐ家の者として生まれ変わるという言い伝えがあると。
今の彼はその双方に当たるだろう。
彼を近くにあった一番大きな葛籠の中に入れ、私もその正面に膝を折り座る。
一度その青白い顔をじっくりと見つめてから紅い唇に口吸をし、静かに息を吐き出した後、手に持つ小刀を自身の首に突き刺した。
私の血で真っ赤に染まる彼の着物が鮮明に見えた。
苦しくなる息と霞む視界。
彼の身体を抱きながら、その肩越しに顔を埋める。
冷たくなる四肢に思わず身を寄せた。
それから間もなく、瞼が重く閉じていき最期に見たのは彼の、、光の宿らない瞳だった。
「待たせてすまなかった……さぁ、伴に逝こう……?」
彼の身体を抱き締めながら、私は葛籠の壁面に背を預けて最期の息を吐いた。
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