第3話 黒紫のヨハネ



「よし、これでいいか」

「むっ、何処か出掛けるのじゃ?」


朝食をスズランと共にした後、一時間程ゴロゴロしてゆったりとした時間を過ごした。

時刻は八時過ぎ、洗面所で鏡を見ながら髪のセットをしているとスズランがひょこっと顔を覗かせる。


「あぁ。騎士団に勤めている母親に会いに行くんだ。どうだい?似合ってるかな」


俺の服装は黒のカッターシャツに白いジャケットスーツに白と金色のネクタイ。

これは見習い騎士の礼服で、騎士団の本部へと行く時は必ずこの服装でと言われている為、着替えたのだ。


「服装は良いが、髪がのぅ。ちと失礼して」

「お、おい。変にいじるな・・・・・・って?ヘアピンかこれ」

「ヨハネの髪型はあれじゃろ?ウルフカットってやつじゃ。それだけじゃ寂しいからのぅ。うむ、可愛い」

「おう、さんきゅ」


そう、俺の髪型は黒と紫がメッシュのウルフカットである。

後ろ髪がサラリとしているのが紫なのだ。あと全体的に毛先も紫である。

結構気に入ってる髪型で、セットには多少時間が掛かるが、これでも慣れたものだ。


「騎士団に向かうなら、妾は姿を消せばならぬのぅ。人の多い所は好きではないのじゃ。魔剣は忘れずに携帯しておくれ。あれがないと繋がりがないようなもんで、寂しいのでのぅ」


魔剣は忘れずに──この言葉は結構に大事な事で、人型になれる魔剣は装備してないと本領発揮できないのだ。

魔剣側が念じる事で会話も可能になるが、それも出来なくなる。

火急の事態が起こっても対処が出来なくなるというデメリットが発生する為、常に携帯が要求されるのだ。


「分かってるよ。色んな景色を見たいんだろう?なら常に傍から離れないでくれ」

「ほほぅ、ヨハネは女を喜ばせる事を言うのぅ。ムズムズしてくるのじゃ」


変な事を言うなっての。

そろそろいい時間だから家から出よう。

騎士団長たる母に会いに行くのは、学園に特待生で通う事も伝えないといけないからだ。

昨日手紙が届いて分かった事だから、まだ説明出来てないしな。

きっと喜ぶに違いないだろう。

自室に戻り、魔剣をベルトに固定して必要な物を持ったらいざゆかん。

ちなみに片手長剣は腰の横、片手剣銃は腰の後ろに装備した。


「いやぁ、やっぱ似合っておるのぅ。惚れそうじゃ・・・・・・いや惚れておる」

「褒めてくれてありがと」


玄関から出てエレベーターで降りると、歩いて駐車場へと赴く。

十六歳となった今、免許を取得してバイクを乗り回すようになった。

中型二輪の免許で、それなりに乗りこなしている。

俺の愛してやまないバイクに跨り、ハンドルを握って魔力を込めるとエンジンが吹き出す。

うんうん、いつ聞いてもいい音してんじゃんね。


「おおっ!なんじゃこの乗り物は?!馬か?馬なのか?!」

「馬より速いぜこれは。まぁ安全運転で行くけどさ」

「なんか痺れるのぅ。素晴らしい乗り物じゃ!音が少々煩いがのぅ」


ちょっとカッコつけたが、スズランは音が気になるようで。

まぁすぐに慣れるとは思うけど、醍醐味は風を感じる事だからね。

スズランを後ろに乗せて、ちゃんと身体に手を回すようにと促した。

振り落とされたら大変だからな。

アクセルを回していつも通りに安全運転で騎士団の本部へと向かった。


────────────


騎士団本部へと到着した俺らはバイクを駐車場へと置いて、てこてこと綺麗なアスファルトの歩道を歩いていく。

過ぎ去っていく見知らぬ顔ぶれは、皆スズラン興味津々だ。

当の本人は熱気のこもった声で、俺へとバイクの良さを伝えてきた。


「おおおっ!本当に良い乗り物じゃっ!こう、なんじゃろうのぅ!風がぶわぁぁーってなるんじゃ!!」

「いつでもまた乗れるから、沢山感じられるよ」


喜んでもらえて嬉しい。バイクの良さを伝えれてよかったよホントに。

騎士団本部の近くまで来ると、周りが出勤する騎士達で溢れかえる。

皆が騎士服を着たエリート達だ。

俺は騎士ではないが、一応装いが見習い騎士なので、それとなく紛れている。

一応スズランには姿を消してもらう事にした。

街中では良いんだけど、ここでは厄介事はごめんだ。

暫く歩くと騎士団本部の目の前、自動扉の前で警備している騎士に話しかけられた。

お勤めご苦労様ですっと。


「少年、見たところ騎士見習いだな。何用でここまで足を伸ばした?」

「お、おい!お前馬鹿野郎っ。す、すいませんヨハネ様。団長はいつも通り、団長室にいますのでどうぞ」


話しかけた騎士は俺とは初対面だったらしいが、もう一人がいつも挨拶してくれる気さくな人であった為、何とか切り抜けられた。

これね、二人とも初対面だと手続きとか面倒くさくなるのよね。

厳しく促す門番騎士は丁寧にもう一人の騎士へと俺の立場を説明し、どんどんと顔が青くなっていく。

そんなに顔色悪くしなくても、そこまで偉くないんだけど俺。


「え、あっ、あの!し、失礼しましたっ!」

「いえいえ、初対面だったらしいので仕方がないかと。それに騎士ではないですよ。ただここに来るのにはこの装いじゃないと通れなくてですね。ヨハネ・クラウソラスと言います。お勤めご苦労様です」

「こちらこそ、大変失礼しましたっ!」

「おいおい、そんなに気を張るなって。坊ちゃんは良い人だから気さくにいけよ」


そう言って知人であるもう一人の騎士は宥める。彼も最初はこんな感じで緊張してたのに。

そういえばそろそろ交代時間だろうか。

ゆっくり休んでね騎士さん達。

軽く会釈をして自動扉の先へ行き、受付の女性へと話し掛ける。

彼女はいつもの人だからか、見慣れているし笑顔を見せてくれた。


「お疲れ様です。少々お待ちを──クラウソラス団長、息子さんが来ておられます。・・・・・・はい、はい。ええ、カッコのいい装備を持ってらっしゃいますよ。はえ、ほ、惚れてませんっ!」


受話器を耳に当てながら、顔を真っ赤にする受付ちゃん。今日も頑張って。


『何の会話じゃろうな?』

「からかわれてんだよ。母さんはからかうのが好きだから」

「おほん。それではエレベーターにて、団長室までどうぞ」

「ありがとう」


受話器を置いて会話が終わった受付ちゃんは、耳まで赤くなりながらそう言った。

そんなに気にしなくてもいいのにね。

促されるようにエレベーターまで歩いて行って、最上階へと目指す。

このエレベーターのふわっと浮く感覚に、ちょっと気持ち悪さを覚えるのは俺だけじゃないはず。


『うぅ・・・・・・なんか嫌じゃな』

「分かる。エレベーターって嫌よな」


ここにもまた新たにエレベーター嫌いの人物を発掘した。

エレベーター嫌いってなんだろうね。知るかボケ。

長い廊下を歩き一番奥にある大きな扉をノックすると、元気な声が聞こえてくる。

聞き慣れた声だが、それでも嬉しくなるというのが家族だろう。

気持ちが軽くなって、浮ついてしまう。

扉を開けると広い部屋が待っていて、中央のソファーを跨いで奥に何処ぞの社長さんが使うような大きな机がある。勿論の事、椅子も豪華っぽい黒の高級椅子。

そこに座るのは子供かなって思うぐらいに若い女性であるが、俺の母親です。


「ヨハネちゃん!おはようっ!」

「はい、おはよう母さん。相変わらず元気だね」

「まぁ!何その強そうな武器っ?!カッコイイっ!」


ハイテンションな母に少し驚きつつも、自然とソファーに座る。

するとスズランが隣にいきなり現れた。

おい、このタイミングの良さはなんじゃい。


「わぁお。まさか魔剣?やっぱヨハネちゃんは素晴らしいわねぇ。母さん感激よ!」

「ヨハネの嫁、兼魔剣のスズランじゃ!すまぬ、ヨハネを妾にくれ!」

「あぁん!いきなりの告白とかすぅんごい!」


身体をくねくねとしながら、ノリに乗る母親である。

なんでいつもこうなるんだろうと思いながらも、テーブルに用意されているクッキーを食べた。うん、美味い。


「母さん。学園の特待生に選ばれちゃってさ、入学金と授業料免除だって。それと入学式が明後日だ。俺がんばった」

「うん、よく頑張ったね。ちゃ〜んと実力を見せつけれて良かったじゃない。流石、私とパパの息子ね!」


対面してソファーに座り、同じくクッキーに手を伸ばす。

スズランは初めて見るのか、なんじゃ?と言いながら口にしてニコニコと笑顔を見せていた。

帰りにスイーツでも買ってあげようかな。


「入学式は明後日よね?母さんも行きたいけど、その日は陛下がお見えになるの。ごめんけど、スズランちゃんが見ててあげて」

「んもぉ、あふぁりまへふぇ!」


多分、当たり前じゃと言ったのだろう。

それに順応能力が高いな母よ。もう認めてるし、これも母だからこそだろう。


「でも魔剣はいつ手に入れたの?」

「今日だね」

「今日?!あら〜、それならまだ馴染んでないわよね。昼までなら空いてるから試合しましょうよ。久々に実力を見たいし」


と、やる気満々の母親の提案に俺は賛成だが。

スズランを見ると未だにクッキーを食べていた。

そんなに好きになったのかとツッコミたいぐらいに頬張っている。さながらハムスターだ。


「なんじゃ、戦闘かえ?いつでも良いぞ」


しっかりと飲み込んで、状況を把握したのか俺に聞いてくる。

これなら問題なさそうだなと確信。

寧ろやる気を出してくれている様子で嬉しい。

母さんとは何度も試合を重ね、研鑽を積んできたが未だに勝てない。

必ず急所を突かれて負けたりを繰り返したりしていた。


「戦うのなら、ちと妾はヨハネと話がしたいのじゃ。その時間はあるかえ?」

「えぇ、たっぷりあるわよスズランちゃん。それじゃあ、私は先に零番訓練所へ行ってるわね〜」


零番訓練所は母さんを含め、歴代の騎士団長が訓練に使う為の専用の大きな建物だ。

専属にそういう環境があるのは素晴らしい事だと、ちょっと羨ましく思ったりもしている。

母さんは先に行っていると言い残し、この場を後にした。

訓練所の場所は何度も足を運んでいる為、よく知っている。

母さんがいない空間となったこの場で先に口を開いたのはスズランであった。


「ヨハネと契約して分かったのじゃが、魔術が使えぬのじゃな。確か昔であれば・・・・・・よく無能なんて呼ばれておったか」

「今でもその概念は変わらず、魔術が使えない人間や亜人なんかは無能扱いさ」

「馬鹿げた話じゃ。使えぬなら他を伸ばせば良いというのに。それに魔術だけが人のそれではなかろう」


この世界の常識、当たり前の知識──生まれた時からその身に魔力を有している我ら生命体は、魔術文明を作り上げた。

しかし、そんな当たり前の事が出来ぬ存在もいたのだ。

周りの人間はそれを忌み嫌い、貶し、差別した。使えない劣等種だと。

ある者は貴族連中に奴隷に堕されて、輪姦や陵辱なんて酷い目にあいながら死んでいった。

ある者は見せしめに磔にされて一人一人に槍を刺されて、死んでも尚その行為が続いた。

それは俺も、そういう風に扱われてもおかしくないという事だ。

魔術が使えない事が判明すると、周りの態度は一変したのだ。

今まで仲良くしていた子も、話さなくなり、いつも間にか虐められるようになった。

石を投げつけられ、皆の輪から弾き出され、コソコソと陰口を言われ、意味のないパシリなんて当たり前。

だけど、だけど俺はそれを剣とその身一つで変えようとしたのだ。

母さんには勝てないが、それでも強さでは副団長を上回る。

実際に副団長と本気の殺し合いをした事があり、その時にこちらは攻撃を受けずに相手を半殺しにまで追い込んだ。


「妾を扱う上で魔法に近い事が出来るようになるんじゃよ。ただ・・・・・・五元素ではないのぅ」


魔剣や聖剣には、それぞれ固有の能力等が存在する。

魔剣と聖剣というタイトルの本を読んだ事がある。

この本は実際に魔剣使いだった存在が著者なのだ。

魔術と魔法の違いとは──現実か空想かという事。

魔術──魔力を持つ人間が築き上げた賜物であり、魔術革命の起点。

魔法──魔術とは次元が異なり、五元素を主とする魔術とは相対して、人間には扱えないのが当たり前。

魔術は魔法に辿り着くために生まれた産物なのだと言われているんだ。

魔剣スズランがどんな固有の能力を持っているのかは知らないが、きっと強いだろう。

魔法に近しい事象を起こせるのだから。


「後は魔剣を手にした時、五感が強化されるのと大幅に身体能力が強化されるのじゃ。片手剣銃の弾丸は魔力を消費する故、撃ち過ぎには注意じゃ。いやまぁ、ヨハネは魔力が多いから気にせんでも良いかのぅ」

「ちょっとストップ。俺って魔力がそんなに多いの?確かに魔剣を扱う条件としては、魔力が多い事も挙げられるけど」

「うむ、多過ぎるぐらいじゃ。しかし本当に勿体ないのぅ。ここまで魔力があって魔術を使えぬとは」


言いたい事は分かる。本当に宝の持ち腐れだなこりゃ。豚に真珠とはよく言ったものだ。

さてと、そろそろ零番訓練所に向かった方が良さそうだ。

余りにも待たせても悪いし、何より早く試したい。

スズランに声を掛け、部屋から出ようとすると「ちょっと待つのじゃ」と止められた。

どうしたのかと思い、俺は振り返って彼女を見る。

スズランの表情は少し曇っていて、良くない感じがするのだが。


「一つ聞きたい事があるんじゃ。ヨハネ、九歳から十四歳までの記憶はあるか?」


突拍子もない質問であっただろう。

だが、俺の中では驚きでいっぱいである。

スズランの問い掛けに対しての答えはノーだ。

俺には過去の記憶──九歳から十四歳までの記憶がない。


「魔剣としては俺の過去を覗けるんだろ?家に帰ったら聞かせてよ」

「いいや、今伝えるのじゃ。きっとヨハネが変われるキッカケになるじゃろう。まずは席に着こう。時間はまだあるじゃろうし」

「今だけは簡略してまとめてくれると助かるよ。詳しくは家で聞くから」


スズランは頷いてソファーに座り、俺も対面して座った。

語りにくそうな顔をしてはいるが、覚悟をしているのだろう。

過去に何があったのだろうかと気が気でならない。

スズランは緊張を解す為か、クッキーを一口頬張る。


「魔法都市国家アルカディアスは数年前、隣国に喧嘩を売られておった。小競り合いから本格的な戦争にまで発展したが、それは数日で終息したんじゃ」

「数年前に戦争?そんな事実知らないし、数日で終わらせるとか誰が出来るんだよ」


歴史の本なんかも読んでいる俺からしたら、何だよそれと首を傾げてしまう。

戦争なんかあれば景気も悪くなるし、こんなにも国中が和気あいあいとしていないだろうと思った。

しかしその反面、数日で終わったとなるなら寧ろ皆、安心するだろうな。


「一人の少年が終わらせたんじゃよ。魔法もロクに扱えず、剣とその身一つで七万の敵兵を相手に帰って来たのじゃ。しかも敵将の首を持ってのぅ」

「・・・・・・まさか、それが俺だと言うのか」


スズランは静かに、何も言わず頷いた。

だとしても本当に記憶がないし、ただ平和に暮らしていたと思っている。

俺が思っている過去と違うなら、何処で食い違いがあるのだろうか。


「この事実を知っておるのはアルカディアス王家、戦争で指揮を執っておったグランツ大将閣下。並びにその戦争で後衛待機しておった兵士の皆じゃ」

「もしかして、騎士の中にもその人達はいるの?」

「一人だけ、おるのぅ。副団長とやらが当時、大佐を務めておった」


俺が試合とはいえ、半殺しにしてしまった彼か。

でもなんで、それを俺に隠しているのだろう。

そう疑問に思ったが、すぐに答えは見つかった。

──あぁ、利用する為だろうと。

小さい子供を、戦争や国の危機に対して利用するのは国としても都合が悪い。

きっと国民からは子供なのに可哀想などと声が上がる筈だ。

だから、成長し成熟して強さ的にも納得のいったタイミングで確立したポストに置いて飼い慣らす。そして利用するんだ。


「──ヨハネ准将閣下」

「・・・・・・っ?!」


スズランの言葉に頭痛が響いた。

キィィィィィンと頭の中で何かが警鐘を鳴らすかのように、ガンガンと痛みが押し寄せてくる。

知らない光景、誰かも分からない人物が、切り取ったシーンの様に流れてくる。


『ヨハネ准将閣下っ、ご活躍の程とても素晴らしゅうございましたっ!』

『まだ子供だと言うのに素晴らしい才覚ですわっ!是非とも将来、うちの子を孕ませて欲しいですわねっ!!』

『本当に・・・・・・すまんかった。我らが兵力一万しかおらぬかった故に、お前一人に責任を押し付けて。じゃが、まさか帰ってくるとはっ・・・・・・お願いじゃから、将来こんな場所に来てはならぬぞ』

『誠に大儀であったっ!ヨハネと言うたか、貴殿には私の愛娘であるアンジュリンデと婚約しろっ。これは決定事項であるっ!』

『ヨハネちゃん・・・・・・お母さんがもっと早く来ていれば・・・・・・神様、おやめ下さいっ。この子だけはっ!平和に暮らせてやりたいんですっ!どうかっ、どうかっ!!』


──プッツン。

脳裏で何かが弾けた音がした。

大佐、貴族の女、グランツ大将閣下、現アルカディアス国王、そして母さん。

皆、俺の過去を知っていたんだ。

そしてグランツ大将閣下と母さんに至っては、俺に平和で安心な暮らしを願っていた。

でも、でも・・・・・・思い出してしまったんだ。

戦場での血生臭い闘争の瞬間を。

同じ人間の肉と骨を断つ感触を。

それを楽しみ、正義だと信じて、悪を滅していると思いながら剣を振っていた自分を。

あぁ、今思えば少年と言うには若すぎたんだろう。

九歳、それはまだ幼子である。

でも今は違うのだと、何が正義で何が悪なのかハッキリ分かる。


「黒紫のヨハネ」


幼き当時、隣国からはそう恐れた。

一振すれば黒き蝶が殺しに来ると。

魔術は使えず、故に人の身でありながら魔法に近い何かを扱う化け物。


「・・・・・・思い出したんじゃな」

「記憶を失う前、母さんに薬を飲めと言われたんだ。きっと錬金術師の秘薬だな」


稀代の天才錬金術師はなんでも錬成してしまう。故に皆がその身を頼るのだが、本当に信頼している存在にしか姿を見せないらしい。

話も聞かないんだとかで、排他的なんだと。

それにしても思い出した事で、頭の中がスッキリして気分が良い。


「午後からは城へ行こうか。国王に話をしに行こう。久々にあのずる賢い顔を拝まないと」

「くひひっ、目的があるのは良い事じゃ。何をしようと妾はヨハネについて行くのじゃよ」

「ありがたい言葉だよスズラン。アンジュリンデにも顔を見せないとね」

「じゃがまずはお主の母親──団長をボコボコにせねばのぅ!」


その通りだ。いつまでも負けてはいられない。

戦場で得た戦い方を見せてやろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いずれ英雄の魔剣物語 うちゅまる @uchu1887

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ