第21話 訪れ
リゼットの訪問
ヘインがクレアでの成功を収め、オルネ商会の拡大に向けて邁進している頃、彼の元にリゼットが訪ねてきた。エリックの屋敷の庭で、秋の柔らかな日差しを浴びながらリゼットは笑顔で言った。
「少しだけ時間ができたから、直接お祝いを伝えに来たの。」
「リゼット様!」ヘインは驚きと嬉しさで目を輝かせた。「まさかこんな風に会いに来てくれるなんて思ってなかったよ。ありがとう。」
「手紙だけじゃ気持ちが伝えきれないからね。それに、ヘインがどんな風に頑張っているのか、自分の目で見てみたかったの。」
ヘインは少し照れたように笑いながら、近くのベンチに座るように促した。「ありがとう。実際に来てもらえると、やっぱり心強いよ。」
「それで、クレアの出張所の話、エリック様から聞いたわ。本当に大きな一歩ね。」リゼットは目を輝かせていた。「これで、オルネ商会はもっと多くの場所に製品を届けられるようになる。ヘインの努力の成果だわ。」
「そうだね。でも、僕だけの力じゃない。エリック様やアランさん、そして君のような仲間がいたから、ここまで来られたんだ。」ヘインは真摯な眼差しで答えた。「リゼット様、君がセラディア領で支えてくれていること、いつも感謝しているよ。」
新しい計画
その日の夕方、エリックの屋敷で、ヘイン、リゼット、エリック、アランが一堂に会することになった。和やかな空気の中、エリックが新たな提案を切り出した。
「皆さん、今日は集まってくれてありがとう。実は、次のステップについて考えていたんだ。ヘイン、君の商会はこれまで製品の質を重視してきたが、今度は製品の幅を広げることを考えてはどうだろうか?」
「幅を広げる…つまり、新しい商品を開発するということですか?」と、ヘインは興味を示した。
「その通り。例えば、クレアの鉱石を使った製品や、他の地域の特産品を取り入れて、新しいラインナップを展開するのはどうだろう?」エリックは地図を指しながら提案を続けた。「これからは、単に商品を売るだけでなく、地域の特産物を活かして、その土地ならではの製品を作ることが大切になる。」
アランも頷きながら言葉を続けた。「もしそうするなら、俺たちの輸送ネットワークもさらに活用できる。新たな製品ができれば、遠くの都市への販路ももっと広がるはずだ。」
ヘインは考え込んだ。これまでの商会の成功は、職人技の高い革製品や手工芸品を中心にしていた。しかし、新たな商品を開発することで、さらに市場を広げることができるかもしれない。それは、今まで以上に多くの人にオルネ商会の魅力を伝えるチャンスでもあった。
リゼットの提案
その時、リゼットが口を開いた。「私もひとつ提案があるの。セラディア領で栽培されているハーブを使った新しい製品はどうかしら?香りがよくて癒しの効果があるから、オルネ商会の他の商品と一緒に提供すれば、きっと魅力的に映ると思うわ。」
「ハーブか…確かに、リラックス効果や香りの良さは、新しい魅力になるかもしれないね。」ヘインは目を輝かせて答えた。「ありがとう、リゼット。とてもいいアイデアだと思う。」
エリックも満足げに頷いた。「これで決まりだな。新しい商品開発を進めるために、セラディア領やクレアでの素材を活かし、オルネ商会の製品の幅を広げよう。そして、アランの輸送ルートでさらに多くの地域に届けていくんだ。」
新たな旅路へ
その夜、ヘインはリゼットと二人で庭を歩いていた。秋の夜風が心地よく、木々の間から見える星空が美しかった。
「新しい挑戦が待っているね。」と、ヘインが静かに言った。「少し不安もあるけど、楽しみの方が大きいかな。」
「ヘインならきっと大丈夫よ。」リゼットは優しく微笑んだ。「これまでだって、たくさんの困難を乗り越えてきたじゃない。今回も、きっと素敵な製品を作って、みんなを驚かせてくれるはず。」
「ありがとう、リゼット。君がこうしてそばにいてくれると、どんな挑戦でも頑張れる気がする。」ヘインは心からそう思った。
そして、二人の間には静かな安心感が漂った。互いに信頼し合い、励まし合いながら、新たな旅路が開かれていくのを感じていた。
オルネ商会の次なる挑戦は、新しい商品開発とさらなる市場の拡大。ヘイン、リゼット、エリック、アラン──それぞれの役割を果たしながら、彼らは次の未来へと進んでいく。そして、その未来には、きっとまた新たな出会いや可能性が待っているだろう。
ヘインの物語はまだまだ続く。夢を追い、仲間と共に歩む彼の道の先に、どんな景色が広がっているのか──その先を誰もが期待していた。
異世界に転生した商社マン、片田舎から始める異世界革命 Nami @namisan1217
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