第14話 おまけ話 視点竜人忍び
「竜人忍び、癒せるか?」
出てしまった臓物を抱え苦しむ門弟を見ながら師範代が尋ねてくる。
自称至高神の声を聞いた私は神聖魔法が使える為、便利使いされている。
竜を信仰する竜人に神聖魔法の使い手は少ない。
〘自称はしていませんが〙
ん?何か幻聴が聞こえたか?
「臓物を収めたなら、傷を塞ぐ事は叶いますが……」
口調にやれと言うならやりますが感を込めて返事をする。
傷を塞いでも、その後起きる感染症を癒やすには更に神聖魔法が必要で、更にライカンスロープ症の感染も考えるとリソースが足りない。
「介錯してやれ」
師範代が、あっさりと言う。
私は愛用の鎌を振り上げた。
最初は血さえ怯んでいたのが、慣れとは恐ろしい。
「[おのぼり]で傷を負った者も全て介錯しろ。魔狼憑きが増えたら事だ。」
魔狼憑きや人狼に傷をつけられると呪いが伝染る。
感染症の概念がないこの世界の人でも、経験則から知られている事だ。
黙って頭を下げたが、正直面倒くさい。
放って置いても、大半が発病前に魔狼に喰われるだろうから心配ない。
近づくなら言葉による警告だけして、殺してまわる事はしないと決めた。
夜営地を出発出来た[おのぼり]は7名。
8名が死ぬか行方不明になった。
冒険者は命懸けの商売だ。
次の更新予定
遺跡探索2 這いずり回る冒険者 弓納持水面 @yuminaduki
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