婚約した王子様が私のことを2番目に好きな女だと言うので私(オレ)も2番目に好きですよと言いました

丸めがね

第1話 オレの願いは

まあみんな聞いてくださいよ


オレは水島 太一(みずしま たいち)

日本という国に、平凡な家庭のひとりっ子長男として生まれ、平凡に生きてきたんだ


平凡に、とはいっても平凡こそが大変なこの時代、そこそこ努力してきた


勉強して運動して部活して塾に行って、国立大学合格出来るほどにはテストで点を取って、少ないながらも友達付き合いもして家族とも上手くやって、ってさ、

コレだけでも平凡って結構超人並みの能力が必要なんじゃないかと思うよ


もちろん環境ガチャ、親ガチャ、幼馴染ガチャに当たったから、という要素もあるけど、それも含めて普通に生きているということの奇跡よ、と思うじゃん


環境は「東京都」で「親がその親から受け継いだそこそこいい場所に立っている、給料だけじゃ買えないような一軒家持ち」、「近所の民度が比較的高い」こと、

親ガチャは「安定した会社員の父」と「頭が良くて快活な母」で「それぞれ普通に常識がある人間」であったこと、

幼馴染は「お隣さんに優秀でイケメンで性格が超良い同い年の男子がいて、ソイツのおかげで友人が安定した」

こと


あれ?こう書くと、オレは前世で100人ぐらいの命を救った大聖人だったんじゃないかと思うほど恵まれてるな


しかし安心して欲しい

世の中はそんなに甘くない


オレは全然モテなかった


ついたあだ名は「フランケンシュタイン」


はい、想像つきましたね


図体はデカくて顔がゴツゴツしている

手足もかなり大きい

文化祭のお化け屋敷ではマジでネジみたいなのを頭の左右につけられて、ノーメイクで「フランケンシュタイン役」そやらされ無事にお客さんに怖がられた


ちなみに幼馴染もほぼノーメイクで「ドラキュラ伯爵」をやり、オレと別の「きゃ〜♡」を女子からいただいていたよ

韓国アイドルをナチュラルにしたようなイケメンだからさ


狼男役の男子もワイルド系イケメンで、ケモ耳つけただけで「きゃ〜♡」とか言われてやんの


まあいい

いいんだ、彼女なんか出来なくても


将来何かご縁があれば、誰かと…(諦めてはいない)

たった1人でいいんだよ


で、理想の女の子を書いてみる


小さくて可愛くてふわふわで、目がまんまるの童顔で優しくて声が可愛くて…


つまりオレと正反対の人間がいい


電車の通学中に毎日5分ぐらい女の子の全体像を考えていた

本当に5分ぐらいだ、信じて欲しい


あ、髪は茶色っぽくてまっすぐサラサラのロングがいいなーとか


そんな娘、加工アプリの中にしかいないし、いたとしてもオレなんて選ぶわけない


選ぶとしたら幼馴染くんかケモ耳くんだろうな

ああ、横に並んで愛でられている姿はさぞ絵になるし可愛いに違いない

悔しいが少し萌える気もする


さて、事件はそんな妄想をしている電車の中で起こった


いつものように「理想女子」を真剣に考えていると、横の車両から悲鳴と共にたくさんの人がなだれ込んできた


朝の通勤通学時間だ、来られてもそんな隙間はない


すぐに人がぎゅうぎゅう詰めになり、身動きが取れなくなってきた


オレは体がデカいからマシなんだろうが、近くにいるランドセルを前で抱えた小さな男の子なんかは息をするのもつらそうに見えた


「なんだお前ら!」

「押すなー!事故るぞ!」

「隣にナイフを持った男がいます!誰か緊急停止ボタンを押して下さい!」

「押しました!」


「きゃー!」


そこからは、写真で撮った名場面のようにコマ送りの映像でしか覚えていない


押し寄せる人

潰されそうになる男の子

助けようと手を伸ばした

人の波に逆流して、押し出されるようにナイフを持った男の目の前に転げ出るオレ

男の子を庇う形で男に背を向けた


多分、この後オレは背中を刺されて死んだ




目覚める?と、白い世界にいた

体がふわふわ浮いている

いや、体は存在していない?


とても気分がいい、全てが軽い


まだ若かったので肉体の衰えは感じたことがなかったが、日々肉体の維持はそれだけで大変なことだったんだなぁと思う


どこからか声がした

何かの存在


「お前は100万人の命を救った

よって、理想を叶えてやろう」


「え?ひゃくまんにん?」

んなわけない


「お前が助けた少年は将来、100万人の命を救う発見をすることが決定している

本当はあの時殺される運命だったのだが」


つまり、オレはあの男の子を助けて死んだ

そしてその男の子はすごい人物になる

よってご褒美をいただける

ということらしかった


「じゃあ、あの…」

そのありがたい申し出に全力でお答えするべく、オレはオレの理想を語ろうとした

「承知しておる」

「え?」


次の瞬間、大昔の映画のエンディングみたいに視界が丸くなって消えていった


そして黒いところに落ちていく


オレは生まれた

さすがに生まれてから3年ぐらいの記憶は赤ちゃんしていて忙しかったので全くないが、5歳過ぎた頃から色々思い出したり、置かれた状況を把握できたりしてきた


オレは、いわゆる異世界の、田舎の(日本でいえば四国とか)、そこそこのお金持ちの領主の末っ子として生まれたらしい

両親はいたって善良、兄たちは末っ子であるオレを溺愛

自然豊かな土地で美味しいものを食べながらのびのび育つ


転生人生のガチャも大当たりだった


しかし一つ、神様?の勘違いからえらいことが起こっていたのだ


オレは


とても

とても


オレの理想通りの





可愛い女の子に転生していたーーー!



そしてここからオレこと、ニコリの恋愛的大冒険が始まるのだ








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婚約した王子様が私のことを2番目に好きな女だと言うので私(オレ)も2番目に好きですよと言いました 丸めがね @marumegane

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