ホンモノノキミハ

名無

第1話 些細な違和感

「最っ悪」


学校から帰ろうとしたときに突然降ってきた雨に思わずそんな声が漏れる。天気予報では、雨が降らない予報だったために傘は持っていない。小雨であれば、このまま走って行けるが、雨はかなり強く、とても走って行けそうにないため、雨宿りをするしかなかった。


しかし、雨宿りをして10分程しても雨は止みそうにない。


「はぁもう諦めよ」


覚悟を決め、足を踏み出そうとしたときにふと、LINEが入った。LINEは弟からで、[いま、どこ?]というものだった。[学校]と返すと[わかった]とだけ返ってきた。

そう返ってきた以上、ここを動くわけにはいかない。弟と私は高校生だが、通っている学校が違うため、LINEが送られるのが遅くても仕方がない。


「ごめん、姉ちゃん遅くなった」


「思ったより早かったから大丈夫」


「なら、良かった」


「傘持ってたんだ」


「雨降りそうだったから持ってきてたんだ」


「そうなんだ」


普段、あまり話さないためにぎこちなく続かない会話を交わす。そんななかで、ある言葉に引っかかる。

弟は、雨が降りそうだったからと言ったが、今朝はそんな感じはしなかった。今朝は、快晴といっていいほど晴れており、天気予報も晴れ予報であった。そのため、学校へ傘を持ってきている人も居なかった。持ってきていたとしても折り畳み傘で、念の為持ってきたようなもので、折り畳みでない普通の傘を持ってきている人は居なかった。


考えすぎといわれればそうかもしれないが、弟に時々僅かな違和感を覚える。その違和感を母親に伝えたが、「あれくらいの年頃なら仕方ないんじゃない」と言うだけで、それ以上は何も言わなかった。


「姉ちゃん、大丈夫?」


そういわれ、ハッとする。どうやら、こんなことを考えてる間に家に着いたようだった。


「ごめん、考えごとしてた」


「気をつけなよ」


「ありがと」


自分の部屋へと戻るとさっきまで考えていたことも忘れて、その後は普段通りに過ごした。


寝ようとベットに入ると、突然思い出したことがあった。


今から五年前、弟は一度いなくなった。いなくなったとはいえ、一日程度ではあるが弟が帰ってきた日からどこか違和感を覚えるようになった。

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