第2話  地下街散歩とバリアコート

〇派遣先の事務所に、プラカードを返却し、最寄り駅付近の路地裏に立ち寄る主人公。

きょろきょろと辺りを見渡し、人が来ないかを確認する。


(よし。誰もいないね)


「ほっ!!」

バシャッ!!


レインウェアにかかっていた雨水が弾け飛んだ。

傘を勢いよく開き直して、雨水を払うかのように。


もっと正確に言うと。

レインウェアやこの主人公の身体の表面に薄い透明なヴェールが纏(まと)っていて、主人公がそれに意識を集中させ、水を弾き飛ばすイメージを念じ、この現象が起きたのである。


(やっぱり、この能力は便利だなぁ。

バレるとやっかいだけど)



〇スマホを取り出して時刻を確認する。

(15時かぁ・・・。微妙だな。

明日もこの嵐が続くから、プラカード持ちの仕事は無いって言ってたしな~。


もう一つの派遣先の仕事も、プラカード持ちの仕事はないみたいだし、別の単発の仕事を受けるしかないかな。嫌だけど、生活のためだし仕方ない)


(真っ直ぐ家に帰るのも、つまらないし~。

けど、外出は控えるようにって、報道の方たちに言われたし~・・・)


(地下街かショッピングモールでウィンドウショッピングして、雨宿りしながら時間を潰(つぶ)すかな。お金あまりないしね)


(できれば、定期券の範囲でがいいんだけど・・・)

主人公が持つ定期券は、みなとみらい線の全駅範囲で1か月分である。


(でも、たまには別の路線の駅にも寄ってみたいかも。

今は電車が動いているけど、運行中止になる可能性もあるし~)


(よし!!決めた。この駅の周辺を散策しよう)


〇とある地下鉄の駅の改札口。


一見、手ぶらに見える黒くて長い丈のレインウェアを着ている主人公。


右腰にある切り込みに手を突っ込み、その先にあるウェストポーチをまさぐり、パスケース付きの小銭入れを取り出す。


ウェストポーチのとなりには、レインバイザーも取り付けられていた。


慣れた手付きでパスケース側を改札機のセンサーにかざすと、扉が開き、通り抜けていった。


すると、地下街の景色が広がっていった。


(やっぱり、見た目が綺麗だよなぁ。地下街って)

(歩くだけでも、地下街は楽しく感じる)

(電車は運行してはいるみたいだったし、以外と、ちらほら人がいるな)



〇 (ファッション系のお店がやっぱり多いかな。)

ちらっと、通路側に飾られている服の値札を見る。

心の中で雷が落ちて、真っ暗になるイメージが展開される。


(ティッ・・・Tシャツに2万円!!

30%セールって、書いているから、値引きされるとして・・・

パーセントの計算・・・出来ない

50%で半分の1万・・・だから、1万5千円前後だろうか・・・


私の月のお小遣い(食費含む)じゃん!!

意味わかんない・・・


どうせ着まくって、洗濯してを繰り返したら、傷むわ、毛玉が付くわってなるし、損するんじゃないかな?


素材が良いのか。デザインが実はすごいのか。・・・シンプルな無地に見えるんだけどな。色味は確かに見かけないかなって感じはするけれど。編み方や縫い方が違うのか。・・・分からん。


こんなのが気楽に買える生活にランクアップさせたいよ・・・


だからといって、ストレス溜めしたくないし、バランスが難しい。

世渡り上手なスキルを持っていたり、うまく、やりくりして快適に過ごせる賢さとかがあればな)



〇 値札から手を離し、とりあえず店の中をのぞいてみることにする。


(見るだけ・・・。見るだけ・・・。

そもそも買えないし。財布のライフポイントがピンチだしね。


服を見るのは、純粋に楽しいし。

まだ私に、女性らしいところが残っているということだな。


自分を着飾ることに関しては、全く興味ないけどね。


髪も軽く、櫛(くし)で梳(と)いだけで、くせ毛が残っているし、ヘアアレンジのスキルは持っていないし、ツヤサラでもない。


世の女性人は、どうやって髪の手入れをしてるのか、どれくらいの予算をつぎ込んでいるのか、ちょっと知りたいかも)



〇 色とりどりの服をハンガーにかけて収納してあるエリアを見る。


(季節が変わりだす頃だし、秋物のデザインやあったかそうな服も多いな。

今年の冬は、どうやって寒さを乗り切るかな・・・


いざとなったら、この私の能力の一つであるバリアコートをフル活用して寒さや雨、雪とかを防御するかな。

頑張れば、半袖Tシャツでも耐えきれるけど。

ほんと、能力様様だよ。


見た目は、このレインウェアで覆い隠せばいいから、外出は楽でいいとして。


問題は、飲食店とかに入ってレインウェアを脱いだ時だな・・・。


半袖姿なのに普通に座って料理を注文したりするもんだから、貧相なのか、変わり者なのかと、まわりの目線が変だったことが・・・


毎年・・・1回はやらかしちゃっているからな。今年は注意しよう)


そうして、その服屋を後にして、地下街を散策する主人公であった。

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変幻自在(プロテアン)バリア&プラカード持ちの創陣 翔射嘩(そうじん かいか)・今も積もれば日常となり黄昏となる co10ho/ことほ @mihomimi

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