変幻自在(プロテアン)バリア&プラカード持ちの創陣 翔射嘩(そうじん かいか)・今も積もれば日常となり黄昏となる
co10ho/ことほ
第1話 プラカード持ちに嵐
〇嵐の中で一人、不動を貫くプラカード持ちの女主人公。
茶髪セミロングで、ほぼ、ほったらかしの寝ぐせウェーブが風で更に吹き荒れる。
オレンジ色のニットを着こみ、紺色のウェストポーチを装着。
ひざ裏までの長さの黒のレインウェアと作業服用の雨にも強い黒のズボンを装備。
足首が覆える丈のグレーのレインブーツを履いている。
レインウェアのフードも被り、レインバイザーも装着している。
〇時期は,夏から秋に変わる狭間の台風繁忙期。
・台風や警報が出ている場合の外出は控えましょう・
場所は、とある商店街の入り口付近。
昼の12時前。
斜めに吹き荒れる風でプラカードがつられて飛びそうになるが、柄を左手でしっかりと持ち、腕を真横に伸ばして地面につける。
もう片方の手は、右腰を軽く掴む。
そして、背筋を真っ直ぐ伸ばし、堂々と立ち誇る。
雨も斜めに降りかかり、体温や視界を奪っていく中。
(ふふん。残り10分。
これくらいの嵐、耐えて見せるさ!!)
〇ピカッ・・・
雷が一瞬、光って姿を消す。
ピキッ バチッ ゴロゴロゴロ・・・
(ん?)
そっと、左腕を曲げて、間接付近でプラカードを支え、両手が身動きできるようにする。
そして、耳をふさぐ。
ドゴゴゴゴォォォーーーンッ!!
(おぉ・・・。
今のは、中々の轟音。地面揺れてない?)
(停電は、全体的には起きてなさそうだけど)
(感電して倒れた人とかもいない・・・というか、誰もいない)
〇(あと、5分。アニソンを1,2曲口ずさめば)
主「ふん、ふふーん、ふん、ふふーん」
報「あの~報道の者なのですが」
主「ふえ?」
報「今朝から、警報レベルの天候なので避難した方がよろしいかと思うのですが・・・?
お仕事ですか?」
主「はい!!」
右手を挙げて、敬礼のポーズを取り、プラカードを左手で持ち、元気に返事をした。
主「8時から12時まで、指定されたこの場所に居続けながら、このプラカードを持つお仕事中です」
突風が吹き荒れ、報道のアナウンサーやカメラマン達がよろけだすのを見て、主人公が風と雨除けになれるポイントに移動し、凛と立つ。
雨、風が遮られて、報道人達は主人公を見やる。
そのプラカードを持つ立ち姿が、とても格好良く見えたのだった。
主「大丈夫ですか?」
報「あっ・・・ありがとうございます。
強いんですね。耐久力がすごいというか、丈夫というか、たくましいですね」
主「えへへ。
でも、ほとんど能力は使ってないんですよ~」
報「?」
主「おっとと。こほん。余力が残っているということです」
〇その商店街でおなじみの12時を知らせるメロディーが流れる。
嵐の音でかき消されるけど、耳をすませば何とか聴きとれる。
主人公の耳にも届いたようだ。
主「あっ!!勤務終了だ。
派遣先の担当者に連絡しますね」
主「もしもし~。ふえっ!?えっ・・・(ガーン・・・)」
「はい・・・。はい。失礼します(しょぼーん・・・)」
報「どうしたんですか?」
主「今日のこの仕事・・・中止の連絡が来てたんですが、見逃したまま実行してしまいました・・・。お給料・・・出ないそうです・・・」
報((((まぁ、この嵐の天候じゃあねぇ・・・))))
(むしろ、休みにならないかなって、チェックしそうなものなんだけど)
報「あっ!!そうだ!!
せっかくだし、そのプラカード。報道してあげますよ。バラエティ系で使わせて下さい」
主「ふえ?」
〇報「3・・・2・・・1・・・どうぞ」
ビュオオオオオーーーー
主「こんにちは。えぇーっと。
若手ホスリーグループが横浜にリゾートホテルをオープン。
みなとみらい線の○○駅まで、徒歩10分」
ビュオオオオオーーーー
「こちらの商店街にも、すぐに立ち寄ることが出来ます・・・」
「えぇーっと。少々お待ちを」
ザァァァーーー
ザァァァーーー
ザァァァーーー
左手でプラカードを持ち、レインウェアの右腰ある切り込みにポケットのように手を突っ込む。そして器用に、ウェストポーチを手探りして、スマホを取り出す。
依頼者側であるホスリーグループが予め派遣先に用意した、告知する場合の宣伝セリフのページを開く。
主「えぇーっと。テーマカラーは、ラピスラズリ。
邪気を払い、成功のためにと努力を重ねておられる方への後押しをするための癒しの宿泊施設を目指します。
客室グレードは、スタンダードからスイートまで。
みなとみらい線沿いにあるので、中華街や赤レンガ倉庫など、横浜観光も楽しめます。夜景の眺めも素敵ですよ」
ビュザァァァーーー ビュザァァァーーー
レインウェアのフードが脱げても、ポイ捨てされていた空き缶が転がってきても、構わずに、スマホ画面に写るセリフを読んでいく。
(あとは、締めくくり・・・かな)
スマホをしまって、両手でプラカードを抱えて、最後の挨拶のセリフを言い切る。
主「ホスリーグループおよびホスリーホテル、そして、こちらの商店街をよろしくお願いいたします。QRコードとホームページは、こちらからどうぞ。プラカードに載せています」
主「よし!!言えた!!」
右手を離して、ガッツポーズをとり満足げ。
嵐は、更に激しくなった。
それでも、彼女は動じなかった。
報「「「「・・・終始、ほぼ不動!!?」」」」
「嵐の勢いがおまけレベルに見えてくるわね」
「すげぇっすね・・・ずっとマイペース・・・」
「あのプラカード、見るからに木製だし、水も吸っているだろうし重たいはずなんですけどね」
「カメラマンとしては、あのブレない所は見習いたい素質ですよ」
○そうして、主人公は報道達に見送られ、外出を控えるように促され、去っていった。
商店街の中に開いていた飲食店を見つけ、昼食を取ることにする。
たまたま、テレビがあり見ていたら、映っていた。
ブホォッ
思わず、お冷を吹きこぼす。
(え?早くない?30分くらいしか経っていないのに?)
お店からは、1品無料サービスが施された。
有難く、お高めな特盛豚骨醤油ラーメンをいただくことにする。
嵐の中で4時間、プラカードを持ちながら立っていた身体が喜ぶほど、ラーメンが美味しかった。
麺をすすっているとウェストポーチの中から電話が鳴り響く。
派遣先にホスリーグループから連絡が入り、主人公に直接お礼の電話をしたいということとなり、感謝の言葉を受けた。
今回の仕事は有りとみなされて給料は支給され、更に2倍出してくれることとなった。
それから、半年間に10日まで、ホスリーグループのホテルに宿泊可能なカードとそこで使えるマネーカード数万円分を贈呈するとのことだった。
主人公は、ラーメンが入っていた、どんぶりを空にして、手を合わせ感謝した。
「ごちそうさまでした。
冷えた身体が温まりました。
金運も上がりました。
あと1ヶ月は生き延びられそうです。
ありがとうございます」
派遣先からは、天候が悪い時は特に、連絡が入っていないかを確認すること。
報道する時は、まず連絡して許可が下りるか確認してからにすること。
でも、結果オーライ。良くやった。
などの声が上がった。
〇電車に乗って、プラカードを派遣先の事務所に返しに行く。
混雑しにくく、邪魔にならない路線ルートを使い、まわりの目を気にせず慣れた感じで、遠回りする。
この主人公の名前は、創陣 翔射嘩(そうじん かいか)。
35歳。独身女性。独活派。
単発の仕事で一日一日をつないでいる生活レベル。
お気に入りの仕事は、プラカード持ち。
今回は活躍しなかったが、実は能力持ちだったりするが、それはまたの機会に。
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