第25話  憧れのゴリッゴリッ


転生から4ヶ月。



今日もお家でおいしい朝食です。




え?まだずっとお家?街に行ったり世界巡ったりワクワクウキウキしないの?




ワクウキはしますねぇ。



しかしながら焦ってあちこち行こうとは全然思わないのです。多分これが女神様が言ってた長命種の特性なんだと思う。



あれー?もう100年たったの〜?10年なんてすぐじゃん!みたいなバカな思考にはならない。ただそんなに時間を気にしない感覚だ。



まあ何が言いたいかと言うと未だに魔法を使う許可が出ていない。




転生者としては由々しき問題だ。





勝手に使って怒られた浄化しか使ってない。

(あ、魔力流すのはよくやります)



だいたい転生者は初日にやらかすのに。僕は初日ジャンケンマスターの話で盛り上がったくらいだ。


あ、ジャンケンのスキルは全然開花してません。



なぜそんなに時間が掛かっているのかって?



それはね、




『そう、そのままですぞ〜。あぁ流す魔力量を増やしてはいけません。先程くらいの…はい、それその量を意識して。押さないように〜』


『まあまあ!だいぶ安定してますがまだ意識してからの無意識まで行ってませんわ。その制御だとまだ小石をちょんくらいしか投げられませんわ〜。』


くぅぅ〜。

コハクもユオもムズムズだ。



僕たちはずっと魔力循環と制御の練習をしてる。ここを疎かには出来ないのだ!





魔導錬金術師になる為には!






あっ。押しちゃった〜。





『ふむ。ではちょっと休憩がてらお話を致しましょうか。意識しながらはだいぶ制御が出来る様になりましたが魔導の道の為にはもう少し訓練が必要ですな』



うむうむ。しかし結構嬉しそうに語るロブなのだ。ダンディでバリトンボイスでイケおじなんだが意外とチャーミングな人なのだ。





『そうですわ。エルフの街で訓練してたら今は魔力量の増加を目指していく段階ですもの。それよりも難しい事をなさってますから。』


ミレイも励ましてくれる。時々、駄メイドになるが基本的に優秀なのだ。戦闘侍女バトルメイドなのだ。そして料理が美味しいんだ。




コハクとユオもお水ごくごく。


当然僕も。



『今の所、循環と制御はコハクが1番上手ですな。天狐の特性なのですかね。』



それを聞いてコハクは大喜び。



宙空を駆けてくるっ!くるっ!


ロブに飛び込んで『きゅきゅきゅーい』



『ほっほっほっ。まだまだ修練が必要じゃて焦るでない』




ロブはコハク達にデレる時はおじいちゃんになる。なんでだろ?





『にゃ〜ん?』





あ、ユオが不服そうだ。




『ユオちゃんは足捌きがうっとりですわ。歩法はもうマスターしましたし。あれはびっくりでしたわ。足跡を消して歩くのが種族特性だとしても闇夜に現れたら狩られそうですもの』



ぴょーん。とミレイの胸に飛び込む。


そういえば


前に賄賂で渡した美容のセットでおっぱいが大きくなったってドヤ顔で言ってたけど


神眼で見たら2㎝大きくなっていたが2㎝大きくなっても僕にはよくわからなかった。


『にゃにゃ〜んっ』 ご満悦。



んむぅ!


むうむう!



2歳児むくむくでむくれてやる!



それに気づいたロブが


『おやおやどうされましたか?ニコ様は座学がとても優秀ですよ。錬金術、魔術、魔法陣、薬学、医学など触りはほとんど目を通しましたよね?』



むうー


『中でも最近の勉強では薬学が多めだったのをお気づきでしたか?効能やどの季節の薬草を使うか、有効かなど』


『そうですわハーブや薬草、薬や調味料に使える物もよく覚えられておりますし。鑑定能力を有しているとそれらを覚えようしない方が多いのですが知識として識ることはとても良い研鑽ですわ』



んむ?そういえば多い、かも?


楽しいからあんまり意識してなかった。



なんで多いの?






『魔力操作が要らず知識で作る“お薬“をそろそろやって見ましょう。“調薬“ですね。以前ニコ様も風邪を引いてお熱が出ましたよね?あの時に飲んだお薬から作って見ましょう』




がばっと、顔を上げる。




『ほ、ほんと!調薬できるの!?』



きらっきらの笑顔だ。




バチコーン!と、ウインクしながら頷く。



僕は万歳ぴょんぴょんだ!





釣られてコハクとユオもぴょんぴょんだ!




『私も見学させていただいても?エルフも基本的な物は家庭で習うのですがロブさんが作られるのを私も覚えたいですわ。』




ほー。家庭の知識で風邪薬作るんだ。竜人程じゃ無いけどエルフも森が好きで住んでるから薬草の知識とかあるんだな。





『はい、大丈夫ですよ。私もエルフの方の知識を知ることが出来ますしね。皆んなでお勉強しましょう』




そして僕たちは離れの工房の“調薬室“へ。




え?そんなのあったの?って





このお家、何でもあるから気にしないでね。




わくわく。


わくわく。



『はい、ではまずは準備からですね。ミレイさんの道具はここにあった予備を使ってニコ様は専用の“薬研“を準備してください』



むっふー。



薬研、憧れてました。むふ。



さすがの女神様。ちいさい僕の手で




作業出来る子供用サイズなのだ。






一度でたくさん作れないけどそんな事はどうでもいいのだ!





小さいな薬研と薬研車を出す。




『ではまずはニコ様が熱を出した時のお薬、“熱冷まし“から作りましょう。材料はわかりますかな?』




んもう!めっちゃ熱、出た時の事いってくる!2歳児なので熱くらいでます!



え? 状態異常無効とか持ってないの?



思いますよね?



はい、持ってません。



持ってるのは“耐性“です。



え? チート転生者は持ってるよ?



はいはい、わかります〜。その意見。




しかし!ここは“アルステルス“ 女神様は皆がたくさん研鑽して発展を望む世界です。



無効系統は“即死系“しか無いのです。



耐性を鍛えたり、レベルが上がると無効表記になるそうです。

しかし100%無効でなく

“ほぼ“ 無効。




喰らった毒や麻痺、その他は治療しないと

後日、死にます。




再生と同じです。無効持ってるからオラオラ〜は出来ない、させないがアルステルスです。




僕?耐性持ってますがまだちいさいので普通に病気になります。(他の人よりはつよい)




なので、薬学はとっても大事なんです。



日々是研究なのです。あ、準備。



『はーい!用意しました〜』



材料をテーブルの上に出す。




そしてロブ先生がチェック。素材の鮮度も重要なのです。(素材は良品から不良品まで用意してその中から選んでもってくる)



『ふむ。ニコ様。神眼は使われましたか?』


むぅ!



『選ぶのには、使ってないよ!』


『ほう、素晴らしい!これとこれ、2品以外は高品質です。よく勉強しておられますな』



ふふーん。ふんす!


えへへ



『2品はダメなやつ〜?』



ちょっと自信あったのにぃー。



『いえ、素材としては最高品質です』



え?ならなんで?



『今回、調薬するのは“風邪を引いた時に使う“ 熱冷ましです。品質が良すぎるのです。ニコ様なら需要と供給を理解出来ると思います』



ぐっ。そうか、これでは風邪の熱を冷ますだけの薬にしては高級品になりすぎるしここまでの効能は必要ない。



『むうぅ〜。さすが薬学。奥が深いなの』


んむんむ。


『おや?ご理解しましたか。そうです風邪の熱冷ましならこれで足りるのです。命の危機にある高熱では無いのですから』



『まあ!私のお家では高品質ほど良いって教わってましたがそう考えれば症状に合っているというのは大事なんですわね』



ほむほむ?とミレイも納得。



ミレイの素材を神眼で

見たら全部が最高品質だった。すげーな。



それから、素材の良し悪しの判断や組み合わせ、注意点。


またミレイの持つ薬草の知識で今度研究を

しましょうとか


なんやかんやあって実践!



素材の薬草を入れて〜



ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ〜



あー。ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ



『はい、ニコ様うれしいのは伝わりましたからニヤニヤせずに薬研とすり潰し具合をよく確認してください』




うふふふ。


それは無理ってもんですぜ。



薬研でゴリッゴリッ。憧れの作業よ?



異世界の薬草をゴリッゴリッしてます僕。




気分はヒャッハーですぞ?



『最初はご自分で見極めて調薬してみましょう。後で比較出来ますので』





『はーい、くふふ』



はぁ〜、ゴリッゴリッ〜、ゴリッゴリッ〜。




み、ミレイ速っ!



はい、お水をそーっと。ぴちょん。はい!




ゴリッゴリッ〜ゴリッゴリッ〜。




よーし、足踏み台を持ってきてお鍋にIN



ぐつぐつ、ぐーるぐる、ぐつぐつ。



ふう〜。薬剤師さんは大変だなー。



ぐつぐつー。もういいかなー?



あっ、すやつどこ行った?



オロオロ、『きゅい』あ、ありがとー、


『にゃにゃーん!』あ!ぶくぶくなってる!



じゃばー。パタパタ冷まして〜






『できました!!』




『はい。確認しますね』


ロブは素材とアイテムの

品質(のみ)鑑定出来るのだ。



ふーむ、ふむ。


ドキドキ


ドキドキ





『ニコ様のはじめての熱冷ましの品質は』



『低品質(苦)です』



『あちゃ〜』



くそう!失敗したかー!


『こちらは失敗ですが、成功なのですよ』



ん?  なに?  とんち?



『ど、どーゆうこと?』


ロブはニヒルな笑みだ。



『ニコ様は風邪を引いて熱が出た飲むお薬を作りましたよね?』



『うん、そーだよ』



『そうするとこちらのお薬では熱が下がらないので失敗です。しかし風邪の引き始め、ちょっと熱っぽいかな〜ではこちらは充分効果があるのです。症状があえば効くちゃんとしたお薬なので成功なのです』



『ちゃんと効く“お薬“にはなってるのね!』



『はい。低品質が“悪“ではないのです』

『効くお薬を作る事が大事なのです』



『今回の熱冷ましは狙った効能とは違うという失敗でしたのでどこに失敗の原因があったか考えて見ましょう』


なるほどー。そうだよな。ふむふむ。


『それを知る為には成功を知らなければわかりません。なので次はすり潰し終わりや煮詰め終わるタイミングなどを私が指示しますのでもう一度やりましょう』



ミレイはバッチリ成功だった。


くぅ〜ちょっとドヤ顔しやがってぇ。



それからロブ監修のもともう一度挑戦!



はぁ〜、ゴリッゴリッ〜ごり『はい!そこ』


え?あ、はい。





なによー。ゴリッゴリッしたいのに。



つぎね。



あ〜、ゴリッゴリッ〜ゴリッゴリッー


やー!ゴ『ストップです!』…りごり…



『ニコ様わかりましたか?薬研ですり潰す時間が長いのです。というか楽しくなり過ぎてすり潰した状態見ていませんね?』



なんだと!



そんな落とし穴があったとは!



ゴリッゴリッ恐るべし。僕を魅了したな!



くぅ!


ま、いいや。ゴリッゴリッ『はい、ストップ』


『えー!まだ3ゴリッゴリッしかしてないよ』



んもう!



『ですが、状態どうですか?』


ふーむ。いい感じに見える。教科書で見た

感じだな。




『いいかんじです』『よろしい』



むー、調薬ってやつはゴリッゴリッの誘惑に負けてはいけない。(メモメモ)




そしてロブ監修のもと成功したお薬できて


もう一度、僕1人で作る。





ゴリッゴリッ〜ごりっ。ぐっ!ここで終わり


ゴリッゴリッ、ゴりっご。ぐうぅ。


ぐつぐつ。


ぐるぐーる、ぐーる… す、ストップ!



ふうー、ふう、ふーー。



額の汗を拭う。ふぃーできた。


『できました!』


『では確認しますね、ふむ。ではニコ様ご自分で見てみましょう』


神眼!


【 熱冷まし  最品質 】



んんん?


『さ、さいてき?ひんしつ?』


ロブ、ニンマリ。


『素晴らしい!最高でも良品でもなく、!わかりますか?ニコ様?熱を下げたいお薬として最もお薬なんです!これは素晴らしい!最適品質を調薬出来るのは薬師としてかなり優秀で御座います』



なるほど〜。適しているね!



と言うかその“鑑定結果“が出るこの世界が



すごい気がするのだが。



人々が研鑽し努力して結果が出ればわかる。



異世界から来た僕は驚愕だよ。いい世界だ。



あとでお祈りしておこう!


あ!この薬お供えしよっかなー。



『ねえねえ、僕が初めて作った最適品質の熱冷ましをね女神様にお供えしてもいーかな?素敵な世界へありがとーってしたいの』



ふたりとも優しい笑顔でした。



そのあとも何回か作って、良品だったり最適だったり、(苦)が出たり



(苦)ってなに?って聞いたら



普通に味が苦いらしかった。




ここでも安定した品質を出すのが

難しいと痛感したけど


失敗の半分はゴリッゴリッのせいだ。


むう、ゴリッゴリッの音に魅了効果とか無いよね?



ロブもミレイと薬草談義したり、狙って低品質を作るという技を見せてもらった

(品質を自在に操るなんてすごい)




はあー楽しかったー。充実!

コハクとユオもだんだんタイミング覚えててすごいって思った。



僕がゴリッゴリットリップしてると教えてくれたりした。


でも実はゴリッゴリッのリズムに乗ってた。



くふふふふ。



夕ご飯の時に最適品質が鑑定が出るのすごいって話しをしたけど最初はきょとんとしてた



やっぱり2人にとってはいや、この世界の人は


普通の事だと気にして無かったけど


僕の考えを説明したら


『我々はいつも導いて頂いていたのか…』


『私たちこそ素晴らしいこの世界を女神様に感謝しなければならないわ…』



と、ちょっと凹んでた。



皆んなで祭壇部屋へ行ってお祈り


ロブとミレイも調薬出来た“最適品質“を

お供えして一緒にお祈り。



ふわぁぁ、と光るのはいつもと一緒だけど


お祈りの時から2人がずっとありがとうございますとか勿体無いお言葉ですとか言ってた。


『どうしたの?』


涙しながら


ミレイは言う。


『女神様が、ユメリカ様がお言葉をおかけくださったのです。ニコ様をよく導いてくれてありがとう。と』 


ロブも

『ニコ様の事もそうですが、私もニコ様の影響でよく研鑽しているとお褒めの言葉を賜りました』


途中、泣きすぎてよくわからなかったから


落ち着くの待って


話を聞いたら祝福を授けてくれたって



そう言ってまた泣き出したから



よーしよし。よかったねぇ。を



30分くらいしていた。



鑑定したら確かに女神様の祝福付いてた。



ただ、効果は神眼でも見えないけど



『女神ユメリカの祝福』



ステータスにこの表示がされていて


また泣いた。



かれこれ1時間も泣いていた。



祭壇部屋のお水サーバーのお水を渡した。



やっと落ち着いた。 




くふふ。やっぱりやさしいねぇ女神様。



くふふふ



この世界はあったかい。くふふふ



ありがとうね!女神様!




くふふ、




2人共よかったね!くふふ。




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女神様!はじめての転生だからってやりすぎです! 僕に大いなる使命とか無理です!えっ?自由に生きていい?じゃあもらっておきます〜。 アン•ジー @an-g

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