第36話 ダンジョンへの第1歩㊱
ついに『空間接続』が成功したもののたった一回できただけではだめだ。狙ったときに毎回できないと作戦は決行できない。これからはその精度を上げる練習に切り替わる。
「ついにやったな!」
「あぁ、ようやく達成だ!ここまで長かった。でもここがスタートラインでもあるんだよな」
「いや、もう十分すごいよ!銃弾にそれを付与するなんてとんでもなさすぎる!」
「まだまだ時間はあるんだ。ゆっくりやればいい」
「でも、できるだけ早くやりたいだろ?俺はそれに答えたい」
すでに俺たちがダンジョンに入ってから丸々5日が経っている。そろそろダンジョンの外でも騒ぎになって救出をしようとしてくれていると信じたいが、だとしても階段がなくなってしまってはどうすることもできない。しかも、これは前例のないことだ。救出することが可能だとしても相当の時間がかかるだろう。それを信じて待つにしてはあまりにも期待が薄すぎる。ここは自分たちでどうにかするしかないのだ。
その夜はつかんだ感覚を忘れたくないという九条の言葉に合わせて日が昇るギリギリまで練習を行った。その結果完全に感覚をつかんできたようで日が昇るころには大体半分ほどの確率で成功するようになっていた。
ただ本人曰く
「あとちょっとなんだけどな。ちょっとだけずれてんだよ」
とのことだ。
ともかく俺たちの作戦が大きく前進したことに変わりはない。この分ならどんなに長く見積もってもあと1週間もしないうちにはアトラクテッドとの戦いに入ることができるだろう。順調でしかない。
「それで光狩はなんでそんな何とも言えない顔をしてるんだ?」
日が昇ったので俺たちは野営場所にへと戻り寝床に座りながらしゃべっていた。スキルを乱発したことで疲れたのであろう九条は寝ているが俺はまだそこまで眠くない。
「いや、九条さんも来宝もめちゃくちゃ頑張ってるわけじゃん。それなのに俺は何もしなくていいのかなって」
アトラクテッドの周囲20mに入ることはできないので当然作戦では近接戦闘という選択肢は除外されている。そのため近接戦闘を行う光狩はアトラクテッドへの攻撃には参加できず狙撃に集中する俺の護衛に入ることになっていた。
「別にお前がさぼっているわけじゃないだろう?ただの役割だ」
「それはそうだけどさ、実際俺が作戦の中で何かできているわけじゃないからさ。なんかそれが、ね」
「気にすんなよ。それに別に何もできないわけじゃない。俺は狙撃をしている間それに集中するために無防備になる。それを守ってくれるお前がいなかった俺も安心して集中しながらの射撃ができない」
「それで、いいのかな?」
「やれることをやる、それが全員に共通している役割だろ?」
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