第33話 ダンジョンへの第1歩㉝

「でも、やるしかないんだろ?それならやってやるよ。ここで待ってても助けが来るかどうかなんてわかんねーしな」


「いいの?俺たちももちろん危険はあるけど九条さんだけ明らかに危険度が違う」


「あぁ、別にいい。それでダンジョンから出れるかもしれないっていうなら悪くない賭けだ」


「わかった。でもまずは作戦を詰めよう。そしてそのためにはまずは今のアトラクテッドを実際にどうなっているのか確認しないといけない」


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俺たちの野営場所から大体30分ほど行ったところにアトラクテッドは変わらず佇んでいた。寝ているのか何をしているのかはわからないが4本の足でただただそこに立っている。


周囲には逃げ遅れてしまったのであろうシーカーたちの亡骸が転がっており、そのどれもが激しい腐敗をしているように見える。そのためだろう。周囲には強烈な腐敗臭が漂っている。


「あいつは動いてないみたいだな」


「あそこにとどまってくれるのならちょうどいい。ここは開けてるから少し離れたところから狙撃できる」


「あぁ、それに止まっていてくれると銃弾に空間接続をするのも楽だからな。最高だ」


五つ星級のセルとはいえ脳だったり心臓に直接銃弾を叩き込まれたら無傷とはいかないだろう。こちらにも十分勝機はある。


「作戦の決行は夜だな。いったん銃弾に空間接続をつなげる練習をしてからやろう」


「了解だ」


練習はすぐにでもしたいが、昼間に銃弾を撃つとなると残弾のことが気になるため練習は残弾を気にする必要のない夜に行うことになった。アトラクテッドに見立てた大きな木に向けて俺が銃を放ちその木の近くにいた九条が弾丸に空間接続を付与して木の中だけを破壊するという練習だ。


しかし、これが意外にもうまくいかない。銃弾に空間接続をつなげることが難しいのだ。空間接続は自分の30m以内に銃弾がないと使うことはできない。しかし、自分から30mまで近づいたところの的確なタイミングでそれを付与するのがあまりにも難しいのだ。当然銃弾は視認できないし、ほぼ瞬間的に飛んで行ってしまう。


「俺が九条の30mいないから銃を撃てばいいんじゃないか?」


「いや、それだともし戦闘になったときに出月のことを守り切れない。できるなら遠くにいてほしい」


俺は近接戦闘どころかそもそも運動というものが得意ではないので近距離で戦闘に巻き込まれたら間違いなく死ねる。それが足枷になって近くから銃が撃てない。


そして何発の木に撃ち込みついに気が倒れてしまっても成功することは一度もなかった。

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