第21話 ダンジョンへの第1歩㉑

『そうなるとあの第20階層関連のやつか?それならすぐに帰還したほうがいいと思うが、、、』


『いや、さすがに第20階層のやつとは関係ないと思う。そもそもイレギュラーが階層をまたいで移動したり、同時に発生したりすることなんてほとんどありえないはず。でも、何か異常事態が起きていることは変わりないしすぐに帰還したほうがいいかもね』


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」


その時光狩がいる方向とは反対側からとんでもない悲鳴が聞こえてきた。


俺はすぐに反対方向を見ることのできる木の枝に乗り移ると悲鳴を上げた主を探す。すると、ここから少し離れた森の中に全速力で足っているシーカーを見ることができた。しかも、装備は血まみれと来ている。明らかに何かがあったとしか考えられない。


『光狩、さっきの悲鳴聞こえたか?』


『もちろん聞こえたよ。何か見えた?』


『あぁ、シーカーが一人血まみれで走って、なっ!』


俺がそう言おうとした瞬間血まみれで走ってたシーカーが胴体を真っ二つにされ、血しぶきをあげて倒れる。そこには先ほどまでいなかったはずの大きなカマキリがいた。しかも、大きいだけじゃない。色はなぜか深紅になっているし、体に対して鎌の部分が異常に大きいように見える。


『どうした?』


『今、シーカーが一人やられた』


『、、、何に?』


『巨大なカマキリだ。しかも深紅の』


『深紅?確かにここにはキラーマンティスがいるけど、そいつは普通に緑色だったはずだけど、、、とにかく逃げるよ。すぐに来宝のところに向かうからそれまでカマキリの動向を見てて』


光狩に言われたようにカマキリのことを見ていると、今しがた自らが切り裂いたシーカーの遺体をさらにずたずたに切り裂いてから、頭を突っ込んで食べ始めた。そのあまりにもグロテスクな光景に思わず俺はえずいてしまう。


カマキリは中途半端に胴体を食べるとまだ移動を始める。その先にはおそらく狩りをしたのであろうパーティーがおり、今まさに撤退しようとしている最中だった。カマキリはまるで獲物を見つけたと言わんばかりにそこにとんでもないスピードで突っ込んでいくと一気に2人を後ろから切り付けて殺害した。


いきなりの襲撃に唖然としているパーティーの他のメンバーにも容赦なくカマキリは襲い掛かり切り裂いていく。あれは明らかに一つ星級のシーカーの手に負えるものじゃない。あまりにも強すぎる。


カマキリはまた遺体をずたずたに切り裂くと頭を胴体に突っ込んで食べ始める。


「来宝、大丈夫かい?」


「あぁ、大丈夫だ」


「それじゃ、今すぐにそいつと距離を取ろう。一つ星級のシーカーたちのパーティーを壊滅させているのなら俺たちの手には負えない。一応、救難要請は出しておいたけど第20階層のこともあるからすぐに強力なシーカーが派遣されるかどうかはわからないしね」

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